社会保障の機能強化へ「増税が必要」/国民会議の吉川座長
社会保障国民会議の座長を務め、経済財政諮問会議の民間議員でもある吉川洋氏(東京大大学院経済学研究科教授)は1月28日、都内で開かれた医療経済研究会の記念大会で講演し「医療を含めた社会保障の機能を強化するためには、負担を増やすことについて国民の間で合意されなければならない。そうしないと制度は持たない」と述べ、社会保障の機能強化には増税が必要との考えを示した。
吉川氏は、政府の財政状況や少子高齢化の進行に関するデータを挙げ、社会保障の課題として、(1)給付やサービスはいかに在るべきか、(2)制度の財政的持続可能性、(3)経済の低迷によるセーフティーネットのほころび―の3点を指摘。社会保障の財源については、2008年秋に大手企業の健保組合が相次いで解散したことに触れ「保険料負担を上げるにも限界がある」とした。
さらに、先進諸国は社会保障費を確保するため消費税率を10−20%に設定していることを示し、「世界の大勢は消費税。高齢化が非常に進んでいる日本は、本来ならば先進諸国よりも高い税率でないといけない。5%というのは異様に低い」と述べ、消費税の増税が必要との考えを強調した。
保険制度については「高いリスクをみんなで支えようというのが保険の本質」とし、窓口負担の割合よりも、高額療養費制度を保険制度の中心として考えるべきと指摘。高額医療・高額介護合算制度を例に挙げ「窓口で一時的に負担して1年間たって還付という制度では使い勝手が悪い。改善するためには社会保障番号がなければ不可能」と述べ、社会保障番号導入の必要性を指摘した。(1/29MEDIFAXより)