社会保障の基準と理念を普遍的な法律に
竹下義樹・全国生活保護裁判連絡会事務局長
なぜ法制化を提起したのか
社会保障法という世界は、非常に漠然としているイメージがあって、今までは定まった見方がなかったという思いから、社会保障の基本的な考え方、理念というものを法律化できないか、というのがこの活動のきっかけだったろうと思います。
社会保障という言葉自身は、たぶんイデオロギー的に対立のあるものではなく、全ての国民が健康で文化的な生活が営める条件をつくることにおいては、全ての政治家、全ての行政担当者がその方向で動いているはずです。
問題は基準となるべきもの、あるいは中身を考える時の理念を、しっかりしたかたちで法律に書き込むことが必要だろうと思いました。そして、そういう理念や基準を示す時に、現状をどれだけリアルに社会に示すかが、大事だということです。
今、貧困がどれだけ広がっているのか、あるいは今、命を粗末にしている現実としてどういうことが日本で問題となっているのか、それを明らかにすることも研究会のテーマでした。そういう研究会を続ける中で、「社会保障基本法」をぜひ国会で論議し、法律にしていただきたいということが、私たちの呼びかけです。
社会保障の中身の理念、基準を明確にするためには、やはり時の政府の考え方によって動いていくというものではなく、ある程度普遍的なものとして、どういう政治勢力の下でも通用する法律が、基本法だと思います。ですから、与野党を問わず政治家の目標として位置付けてもらえる「社会保障基本法」を提案していきたいと思ったわけです。
国民の要求を政策化するシステムづくり
ひとこと中身のことで触れておきたいのは、社会保障の中身を考える時に、中心はあくまで国民であることだと思います。国民が自分の生活を豊かにするために、自らの努力だけでは十分に達成できない部分については、まさに公の国や地方公共団体の援助を必要とするわけですから、個々人の努力と公の責任・援助とを、どういうかたちで図式化するか、これが一つ大事です。
もう一つは、国民の声が常に国や地方の政策に生かされる必要があります。それが国民の声によって、国民の生活に根ざした要求によって政策化される、そういう道筋、システムを作ることが「社会保障基本法」にとって非常に重要になると思っています。従って、国民が自らの権利としての社会保障を主張できる、そういう法律的な基盤、そしてそれが、単に我儘ではなくて、生きるために社会全体が、それを十分に受け入れることのできる、そういう条件づくりが法律に謳われているものが、「社会保障基本法」そのものだろうと思っています。
ぜひ、この法案内容を熟読していただいて、ご批判いただくところはご批判いただきながら、よりレベルの高い、より社会に受け入れられることのできる、そういう「社会保障基本法」に成長させて、立法のかたちで実現することをお願いしたいと思っています。(08年4月)