直接支払いで「未収金減少」1割のみ/医会、出産一時金で調査
出産育児一時金の医療機関への直接支払い制度の導入で、未収金が減った診療所はわずか1割にすぎないことが、日本産婦人科医会が行ったアンケート調査で分かった。医会は2月10日の定例会見で調査結果を発表する。厚生労働省は制度の導入が未収金対策にもつながると説明してきたが、医療現場からは「借金など負担だけが増えた」との指摘も上がっている。
直接支払い制度が2009年10月から一部の医療機関で導入されたことを受け、医会は実態調査を行った。09年12月に分娩を扱う会員2806施設を対象にアンケートを行い、62.9%の1764施設(病院660、診療所1095、記載なし9)から回答を得た。
分娩費の未収金について制度導入で「減少した」と回答した診療所は12%。「変わらない」は52%と過半数を占めた。病院でも「変わらない」が44%を占め、「減少した」は29%だった。
医会の会員で日本のお産を守る会の石井廣重事務局長は2月9日、取材に対し「未払い問題は主に公立病院の事務職員の怠慢であり、一般医療機関では未払いはほとんどない」と述べ、制度導入の理由に未収金問題の減少は当てはまらないとした。
また、制度の実施で借り入れが必要になるなど経営に影響が出ていると回答した医療機関は全体の3割に上った。分娩から一時金の支払いまで、2カ月程度かかるため、分娩費用の一時的な「肩代わり」を余儀なくされることが影響している。
石井事務局長は「月に40件のお産をしている産科医院なら、2カ月間で3200万円の収入が途絶える。借金をすれば利子を払わなくてはいけない。多くの中小施設は金銭的にも人材にも余裕がない」と窮状を訴えた。
一方、すでに制度を導入した施設は全体の85%に上った。都道府県別では100%実施は13カ所だった。
猶予期間は3月末で終了し、4月からは直接支払いが本格実施される。厚労省は、医療機関に負担をかけないよう、制度の改善策を検討している。医会は、会員施設の経営に支障が出ないよう、厚労省に制度の改善を求めていく方針だ。(2/10MEDIFAXより)