病院賠償、2審も認めず/小児科医の過労自殺訴訟
東京の小児科医中原利郎さん(当時44) のうつ病による自殺をめぐり、遺族4人が勤務先の病院を運営する立正佼成会に対し、計1億2000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は10月22日、請求を退けた1審判決を支持、遺族の控訴を棄却した。
中原さんの自殺は過労が原因として労災認定されているが、鈴木健太裁判長は「うつ病の症状もみられたが、中原さんは業務をそれなりに処理し、無断欠勤もなかった。産業医への相談もなく、精神的な異変を病院側は認識できなかった」と指摘。安全配慮義務違反による賠償責任は生じないと判断した。
遺族側弁護士は「労災が認められたのに、使用者の責任が否定されたのは珍しい」としている。
遺族側は、今回の訴訟のほか労災認定を求める訴訟も提起。東京地裁は2007年3月、自殺を労災と認める判決を言い渡し、そのまま確定した。
しかし、約2週間後にあった今回の訴訟の東京地裁判決は、自殺原因を過労と認めずに請求を棄却。遺族が控訴していた。
鈴木裁判長は「自殺の4−5カ月前には最大月8回の当直など過重な勤務をし、全国的な小児科医不足の中で医師の減少にも直面。著しい負担があった」として、過労が自殺原因のうつ病を引き起こしたと認めた。
判決によると、中原さんは1987年4月から、東京都中野区の立正佼成会付属佼成病院に勤務。99年1月末に小児科部長代行となり、同年3月から6月の間にうつ病を発症、8月に病院屋上から飛び降り自殺した。【共同】(10/24MEDIFAXより)