病院は増収も大学病院に集中、診療所は減収/日医総研WP
日医総研はこのほど、2008年度診療報酬改定が医療機関の収入などに与える影響を試算した結果をワーキングペーパー(WP) にまとめた。WPによると、保険診療収入の前年同期比は、病院では辛うじて増収となったものの、増収分は大学病院に集中し、小規模な個人病院では、診療報酬改定効果も診療所からの財政支援効果も見られなかった。また、診療所では日本医師会、TKC全国会、厚生労働省いずれのデータでもマイナスだった。
WPでは、医療費の自然増などが厚労省の説明通り3%だった場合、粗い試算をすれば病院、診療所の保険診療収入(08年4−6月)はそれぞれ2.6%増、1.3%増になるはずだと指摘。ただ日医の「緊急レセプト調査」(08年4−6月分)、TKC全国会の「医業経営指標」(同)、厚労省の「最近の医療費の動向」(月次版)のいずれも、病院で0.1−1.0%増、診療所で0.2%−3.3%減となり、想定される収入増とはなっていなかった。また、厚労省データを病院開設者別に見ると、医療費総額、1施設当たり医療費は大学病院でそれぞれ4.6%増、4.1%増となったものの、個人病院では17.3%減、3.2%減だった。
TKCデータで損益分岐点比率を見ると、自然増などが3%あった場合、粗い試算をすれば病院で前年同期の92.6%から91.5%に、診療所で96.2%から
94.9%に回復するはずだと説明。しかし実際には、病院が94.9%、診療所が98.9%と逆に悪化した。外来管理加算については、診療所での当初の減収見込みは240億円だったが、日医レセプト調査からは見込みを大幅に上回る805億円の減収になるとの試算結果が示された。
WPでは、中医協が08年2月に厚労大臣に提出した答申書で「初・再診料、外来管理加算、入院基本料などの基本診療料の在り方を検討し、今後の診療報酬改定に反映させる」との文言が示されていると指摘。また3月の中医協・改定結果検証部会で「財源が当初見込みと異なる場合には、対策を考えなければならない」との発言もあったとしている。その上で「診療所の損益分岐点比率が100%に近づいている実態を踏まえると、基本診療料の枠組みの中で外来管理加算の在り方を見直すことに先立って、緊急の対応策も求められる」と強調している。
日医が14日に公表した「外来管理加算に関するアンケート調査の結果速報(要約)」では、外来管理加算の見直しによる影響額は748億円の減収となっている。日医の中川俊男常任理事は、影響額は805億円だったとしている緊急レセプト調査との関係について「調査期間の違いによるもので、有意差は見られなかった」と説明した。(1/16MEDIFAXより)