産科医当直は「労働時間」/奈良地裁、県に割増賃金支払い命令  PDF

産科医当直は「労働時間」/奈良地裁、県に割増賃金支払い命令

 県立奈良病院(奈良市)の産科医2人が、2004年、05年の当直勤務の時間外割増賃金など計約9200万円の支払いを県に求めた訴訟の判決で、奈良地裁(坂倉充信裁判長、異動のため一谷好文裁判長代読)は4月22日、当直を時間外労働と認め、計約1500万円の支払いを命じた。奈良県は当直1回につき2万円の手当を払うのみだった。弁護士によると、医師の当直が労働時間に当たるかどうか争われた訴訟は初めて。当直に定額手当しか支払わない例は全国にあり、ほかの病院にも影響を与えそうだ。

 判決は「産科医は待機時間も労働から離れていたとは言えず、当直開始から終了まで病院の指揮下にあった」と指摘。当直は労働基準法上の時間外労働に当たり、割増賃金支払いの対象になるとして「現実に診療をした時間だけが労働時間」とする県側主張を退けた。

 判決によると、産科医2人は04−05年にかけてそれぞれ約200回、夜間、休日に当直勤務をした。その際、分娩に立ち会うことも多く、異常分娩の時に診療行為をすることもあった。さらに、病院での宿直時は睡眠時間を十分取ることは難しく、当直中はポケベルを携帯し、呼び出しに速やかに応じることを義務付けられていた。判決は時効となった04年10月以前を除いた分について、手当を支払うよう命じた。一方、休日も自宅で呼び出しに備える「宅直勤務」について、判決は「医師が自主的に設けたもので病院の指示ではない」として労働時間と認めなかった。判決後、原告の産科医らは「緊急事態に対応するためにはコストがかかることを考えてほしい」などとコメントした。

 当直勤務をめぐっては、ビル管理会社社員の宿直を労働時間とした最高裁判決がある。【共同】(4/24MEDIFAXより)

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