産婦人科医の8.4%に気分・不安障害/日産婦・委員会が調査
日本産科婦人科学会の2010年度第1回拡大医療改革委員会と「産婦人科医療改革公開フォーラム」が1月30日、東京都内で開かれ、産婦人科医の8.4%が臨床的に問題となる程度の気分障害、不安障害を抱えているとの調査結果を「次世代を担う男女産婦人科医師キャリアサポート委員会」が、報告した。
調査は09年12月−10年1月と同年4月に産婦人科医1301人を対象に行った。米国精神医学会が作成した抑うつなどの危険因子「K6」を用いて調べた結果、K6が10点以上のうち臨床的に問題となる不安障害などを抱えている比率は産婦人科医は8.4%と高頻度だった。日本人の一般集団で1.9%とされる。同委員会は、勤務時間が長く当直が多いほど高い傾向にあるとしたほか「年収、労働量、自己決定、情緒的支援満足度が危険因子になっている」と説明。産婦人科医のバーンアウトを防止する上でも労働環境の是正が必要とした。
●産婦人科医は増加も処遇改善は限定的
一方、産婦人科医数は増加傾向にあり一時期の危機的状況は脱しつつあるが、当直回数や月間の勤務推定時間は改善されておらず、施設間格差、地域格差が大きくなっているとの報告もあった。海野信也・医療改革委員会委員長は、日産婦の年度別入会者数は04年に101人まで落ち込んだものの、09年に452人、10年には477人と増加傾向にあると報告。分娩手当の支給施設は、大学病院の本院で08年は14施設だったが、10年は44施設と急速な増加を示し、全大学病院の半数に迫る勢いとした。しかし、時間外勤務の処遇改善は一部の施設に限定されていると説明した。
中井章人氏(日本医科大多摩永山病院)は産婦人科医療提供体制に関する日本産婦人科医会のアンケート調査結果を報告した。1カ月当たりの平均当直回数は08年から3年間、産婦人科は依然として増加傾向が続き、他診療科の1.5倍となっている。
●常勤医1人施設、島根・石川で4割以上
産婦人科の常勤医師1人施設の割合は全国で11.4%、2人施設の割合は15.9%だった。都道府県別に見ると、常勤産婦人科医1人施設の割合が最も高いのが島根で41.7%、石川が40.0%。30%台を占めたのが青森、山形、高知、大分の各県となっている。一方で岩手、千葉など一部の県では1人常勤医施設はゼロで地域間格差も出ている。
関東地区では常勤医数は多いものの分娩数も多い傾向にあった。東京都の特別区、多摩地域を対象に、常勤医数、医師1人当たり分娩数、当直回数などの指標で分析したところ、都市部に比較して周辺地区は施設当たりの医師が少なく、1人当たりの分娩数が多くて当直回数も多かった。しかし、中井氏は「1カ月間の推定勤務時間で見ると同等になっている」とし、産婦人科医の労働環境の厳しさは都市部も周辺部も同じとした。(2/1MEDIFAXより)