生活保護費の大幅抑制へ 医療扶助の「適正化」に矛先  PDF

生活保護費の大幅抑制へ 医療扶助の「適正化」に矛先

 生活保護費の抑制に向けて政府が大幅な見直しに乗り出した。2013年度政府予算案で公共事業などを大幅に増額する一方で、生活保護の給付水準引き下げなど670億円削減を盛り込んだ。さらに保護費の約半分を占める医療扶助については、医療機関への指導強化などを打ち出した。生活保護受給者数は12年10月時点で約214万人、保護費は年間3・7兆円にのぼるとされ、厚労省は改革に向けて議論を進めてきた。この間、マスコミ等で生活保護バッシングが煽られ、自助自立を優先する自民党は政権公約で10%削減方針を掲げていた。

 生活保護制度見直しに関し厚労省は1月16日、社会保障審議会の二つの部会に報告書案を提出した。

「減額ありき」では貧困の連鎖防げない

 一つは、生活扶助の基準額と一般低所得世帯(全世帯のうち収入が低い方から10%の世帯)の生活費を比較して、一部子育て世帯で生活扶助が一般低所得世帯の生活費の水準を上回る例が見られるというもので、生活保護基準部会が18日にとりまとめた。基準額の引き下げは、この結果をもとにバランスをとることを名目とする。影響が最も大きいのは子どものいる生活保護世帯であるが、基準額が住民税非課税限度額などと連動するため、生活保護を受給していない子育て世帯も直撃する。「貧困の連鎖」を防ぐどころか、それを拡大しかねない「減額ありき」の姿勢に批判が強まっている。

「受診状況は国保と変わらず」厚労省

 もう一つは、就労支援など「生活困窮者支援制度」の導入と生活保護制度改革を柱とするもので、「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」に報告され、23日に了承した。医療扶助については、重複受診や医薬品の横流しなどが一部にあると指摘した上で、「適正化」のための指定医療機関への指導強化などの取り組みを提言した(表1)

表1 医療扶助「適正化」に向けた主な項目
(社保審生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会報告書)

○医療扶助への一部負担導入は「行うべきではない」とした上で「額が小さくとも一部負担を検討すべきという意見があった」とも付記
○受診抑制しないよう留意しつつ後発品の使用促進も含めて、重複受診や医薬品の横流しに対応していく
○福祉事務所が生活保護受給者の健康保持・増進に向けた支援を行う
○福祉事務所が「医療の継続性等確認の必要性あり」と判断した場合は、他の医療機関の検診受診を指示する
○電子レセプト管理システムに適正化対象項目を容易に抽出できる機能を追加し、指定医療機関の重点的な点検指導を行う
○指定医療機関に指定の有効期間を導入
○指定医療機関に不正があった場合の対処方法を厳格化
○指定医療機関・保険医療機関どちらかの指定取消でもう一方の指定取消もできるよう検討
○指定医療機関へ国による直接指導も実施できるよう検討

 後発医薬品の使用については、「必要な受診を抑制することがないよう十分に留意しつつ、後発医薬品の使用促進などを含め、(不適正な受給の)問題にはしっかりと対応していくことが必要」と、義務づけにまでは踏み込まなかった。

 焦点となっていた医療費一部負担の導入については、両論併記としていた原案に反発が強かったため、「行うべきでない」と明記して、「額が小さくとも一部負担を導入すべきという意見があった」と付記する書きぶりに改めた。

 一部負担の導入については、日医が「今の状況では行き過ぎだ」と主張。日本弁護士連合会も受診抑制に直結し医療を受ける権利を侵害すると指摘している。

 財務省の財政審は、翌月償還を含む一部負担導入を提言(表2)。30〜39歳を例に一人あたりの医療扶助費は市町村国保などの入院外医療費の2・7倍とのデータを示し、一般よりも傷病を有する割合が高いことを差し引いても「全額公費負担に伴うモラルハザードは生じていないか」と一部負担導入の論拠としている。

表2 財政審財政制度分科会報告書より

医  療

○直ちに70〜74歳の自己負担を法定2割に
○高度医療の保険給付について判断ルール明確化
○平均在院日数の減少などの効果が不確実なまま診療報酬増額改定はあり得ない
○ICT活用による重複受診、過剰な薬剤投与の削減、病診の役割分担明確化
○後発医薬品の使用促進
○医薬品の保険償還額を設定し、上回る部分は自己負担(参照価格制)の導入
○市販品類似薬の保険給付除外への不断の対応

介  護

○利用者負担割合の早急な引き上げ
○軽度者に対する介護サービスの保険給付からの除外

生活保護

○医療扶助における後発医薬品の原則化、一時窓口負担の導入(翌月償還を含む)

 一方で厚労省の古川夏樹保護課長は、「無料だからたくさん受診するという動向は一部を除き見受けられない」と、入院外での国保等患者との比較データを示し、全く逆の指摘をしている(12月14日市町村職員対象のセミナー、社会保険旬報?2518)。

 前述の財務省資料では、3割負担の現役世代で差がみられるが、最も多数の70歳以上(1割負担)ではほとんど差がみられない。逆にいえば負担割合に起因する国保の受診抑制がこれだけあるとの裏返しといえまいか。さらなる慎重な検討が必要といえよう。

 

 

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