生保の指導・検査で改善申し入れ 京都市に適切な運用求める  PDF

生保の指導・検査で改善申し入れ 京都市に適切な運用求める

 協会は9月11日、京都市に対して、生活保護医療扶助指定医療機関に対する個別指導、立入検査の運営に関する改善申し入れを行った。京都市は指定医療機関に対して指導、検査(保険医療でいう監査)を実施する権限を有するが、市内で開業する当会会員に対して、指導を経ずいきなり検査が実施された事例が報告されたため、国が定めた運営要領に則った行政手続きを行うよう改善を申し入れた。

 申し入れは京都市保健福祉局保健福祉部適正給付推進担当部長および同課長に対して行った。当日は、協会から事務局2人を派遣、京都市は適正給付推進課の係長および課員の2人が対応した。

 今回の問題は、指導を経ずいきなり検査が実施された点にある。国は「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日・社発第727号通知。以下、「運営要領」という)の「第六 指導および検査」において、「検査は、個別指導の結果、検査を行なう必要があると認められる指定医療機関および個別指導を受けることを拒否する指定医療機関とする。ただし、上記以外の指定医療機関であって、診療内容又は診療報酬の請求に不正又は不当があると疑うに足りる理由があって直ちに検査を行う必要があると認められる場合は、この限りでない」と定めている。

 しかし、検査による調書の写しを協会事務局が確認したところ、今回の場合、保険医療の監査であれば行政指導で改善が十分に期待できる内容であり、指導を経ず検査をいきなり実施する必要性には及ばないと判断できた。

 そのため、協会としては、適正給付推進課が「運営要領」の定める行政手続きを逸脱しており、指導と検査を峻別していないのではないかと指摘した。

 その上で、以下の4点について改善を求めた。

 (1)本件の立入検査は、理由及び必要性を欠いた状況で、個別指導を経ずにいきなり実施される等、「運営要領」が定める行政手続きを著しく逸脱しているため、全て無効とすること。

 (2)被指導者、被検査者の人権への配慮を欠いた「取り調べ」紛いの個別指導・立入検査が実施されているとの報告があった。事実であれば重大な問題であるので、仮に事実であった場合は即時改善すること。

 (3)立入検査調書に書かれた内容について、被検査者が「事実と異なる」旨を訴えた場合は、検査をやり直し、正しい調書を作成すること。

 (4)個別指導・立入検査を実施する場合は、「運営要領」を順守し、「検査は、個別指導の結果、検査を行なう必要があると認められる指定医療機関および個別指導を受けることを拒否する指定医療機関とする」に則ること。

 また、京都府・京都市・京都府医師会で共催している「生活保護連絡協議会」において調整すること。また、協会会員に対して実施する場合は、当会理事者・事務局の立ち会いを認めること。

 先の国会で廃案となった生活保護法改正案では、指定医療機関に対する指導、検査を強化する改定が盛り込まれていた。あまりに厳しすぎる指導、検査は指定医療機関の委縮診療や、ひいては指定の返上につながりかねず、結果として被保護者への医療提供に支障を及ぼす可能性もある。協会は改正法案の再提出に注意を払うと同時に、京都市適正給付推進課の指導、検査が適切に運用されるよう、働きかけていきたい。

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