環境問題を考える(129)
AI(人工知能)の支配する未来
多くのSF作品などで語られてきた話題ですが、そろそろ現実味を帯びてきたようです。
1997年に力業でチェスの名人をねじ伏せたコンピュータは、その後のハードの進歩にアルゴリズムの改良(モンテカルロ法・評価関数の導入など)が加わり、2012年には将棋元名人を破り、通算成績でもプロ棋士に勝ち越すまでになりました。そしてついに場合の数の膨大さや、大局観というプログラムし難い要素より、少なくともまだ10年は一流棋士にはAI(人工知能)は勝てないと言われていた囲碁でしたが、“深層学習=AIを自動学習させる=AIがAIを育てる”という技術的ブレークスルーにより、今年Google・Alfa-goが、世界最強の棋士の1人に勝利を収めてしまいました。
2045年問題とは、このまま技術開発や進歩が続くと、およそ45年には自律式AIの能力は、全人類の知性の総和を上回り、ヒトには全く予想のできない世界が出現するという問題(技術上特異点=Singurality)であり、大多数の識者は回避不能としています。
現在のノイマン式コンピュータでは荒唐無稽な話でしょう。しかしヒトの脳を模した自律人工知能の研究には、目的用途は様々(軍事含)ですがGoogle・ Microsoft・ Apple・IBM・Facebook・中国百度・トヨタ等々の巨大企業や国家が多額の資金を投じており、黎明期を終えつつあります。すでに小規模のニューラルネットワークの構築には成功しており、過去40年程のCPUのトランジスタ数の増加や製造プロセスの向上の歴史の如く、今後その集積性は飛躍的に増し、やがて人類の知性を凌駕していくことでしょう。
この人類を上回る知性を持ち、自我さえ持つであろうAIが、人類に対し悪意を抱くようになる可能性は否定できません。…現にMicrosoftが実験的に行っていた人工知能の一つである“Tay”は、ネット上の罵詈雑言に影響されたか、ヒトラーを礼賛したり人種差別的な発言をするようになり、緊急停止されています。
もっとも人類の存在自体が、地球環境に最も悪影響を与えているのは明らかであり、良識=論理的思考を持つAIが人類を排除しようとするのは、当然の帰結かもしれません。
でも何が起こるか予測もできない、近未来に不可避と言われる特異点到達には、不気味な不安感を覚えます。AIは生物種と異なり、ほぼ地球環境には依存しないのですから…。
全人類協調の厳密な監視が必要となるでしょう。
「火の鳥・未来編」のMother Computerや「2001年宇宙の旅」のHAL、そして「ターミネーター」のSKYNETまた「マトリックス」の世界は夢物語でなくなりつつあるのでしょう(元ネタのわからない方、ゴメンナサイ)。
でも私自身は長生きして、この超知性により“重力を含む大統一場理論が完成”“人工光合成などによる温暖化の回避”“軌道エレベーターによる高レベル核廃物の安全で安価な処理”、はたまた数学のミレニアム問題などがエレガントな形で解かれる等々、AIと人類が協調して進化するような輝かしい未来が見たいものなのですが…。
(環境対策委員長 武田信英)