環境問題を考える(127)  PDF

 環境問題を考える(127)

IAEA報告

 

 2015年8月31日、IAEAは東電福島原発事故最終報告書を公表した。

 IAEA=International Atomic Energy Agency国際原子力機関〜原子力の原発など平和的(と呼ばれる)利用の促進と、軍事的利用(核兵器)への転用防止を目的とする国際機関。原発推進を旨とする機関から、東電・国に対し、厳しい批判が盛り込まれた報告が出されたのである。

 報告書は、東電も国も「日本の原発は安全である」と「基本的な思い込み」をし、繰り返し安全対策の強化が迫られる機会があったにもかかわらず、それを繰り返し怠ってきたことを厳しく批判した。200頁以上に及ぶ具体的な言及に触れる余裕はないが、「安全」な福島原発が重大事故を起こしてしまったそのもろさの根幹には、東電の事故対策は、もし重大事故が起こってしまえば、それに対処するために絶対に必要となる「交流電源はたぶん回復するだろう」(傍線筆者、以下同じ)をその前提にしていること、また事故に対処するための機器の運転などに必要な直流電源や高圧空気はいつでも確保できると思い込んでいて、なんら対策を講じようとしてこなかったことが、重大事故を引き起こし、かつそれに対処できなかった根本原因であったと断定した。

 原発事故に対する国際基準(IAEA基準)は1〜5段階に分類され、その各段階に応じて対策を講じることが定められているが、福島原発ではその深刻度が高い4・5段階の対策が、ほとんど何もなかったのである。福島原発の事故は、起こるべくして起こったのだといえる。ではその教訓は、今後に生かされているのであろうか? 否である。

 4段階〜炉心溶融など過酷事故に対し、事故拡大を防ぎ放射能物質の放出を最小限にするために、日本では「新規制基準」を設けたが、例えば川内原発適合判断は、「運転期間中に巨大噴火は、ないだろう」とし、規制委員会は「新基準に合致するかの判断はするが、それが『安全』だとも言わない」。また第5段階の対策に含まれる住民避難計画は、義務化はされたが、アメリカのようにそれが必要充分であることが証明されることが原発運転の条件などにはならず、極めて形式的で実効性は審査さえされない。そして世界一厳しい安全基準ですからと、再稼働を強行する。新しい安全神話と、新しい事故へ一歩を踏み出し始めたのではないだろうか。

(理事・飯田哲夫)

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