理解深まる医療安全担当者スクール  PDF

理解深まる医療安全担当者スクール

 
 協会は、2013年度より会員限定の医療安全担当者スクールを開始した。これは、協会発行の『事例で見る医療安全対策の心得』をテキストに学習しつつ、各医療機関での医療安全対策を個別具体的に検討・検証するもの。以下、受講された感想を掲載する。
 
過去の事例から医療安全学習 対応方法をスタッフと共有も
 
伏見 高北晋一
 
 当院は2006年開業の耳鼻咽喉科医院である。開業後、勤務医と開業医では医療安全に対する立場が大きく違うことを認識した。
 開業すると医事問題に対してほぼ全面的に最前線の立場で対応しなければならない。すぐに相談できる専門部門も院内にはない。迅速な判断を迫られた際には、それ相応の知識と覚悟が必要であるにもかかわらず、その経験も多い訳ではなく(経験豊富なのも問題であるが…)、いざというときの不安がどうしてもつきまとう。
 開業医は受付での患者クレームや待合室での怪我など院内のあらゆる場所での事故や問題点にも対応しなければならない。多忙な診療の中で、瞬時に対応方法を判断しなければならないことも少なくなく、開業医ならではのストレスがそこにある。
 そこで、その不安やストレスを少しでも払拭するために、今回、協会の医療安全担当者スクールにスタッフとともに参加した。
 
医療安全担当者スクールとは
 
 研修会は医療安全・医事問題の考え方、各種用語の定義と使い方、事故時の対応の実際、紛争・訴訟の現状から、紛争になった場合の具体的対応の仕方など、非常に懇切丁寧に説明していただいた。モヤモヤしていた用語の解釈がスッキリ理解でき、いろいろな事故で、どのように対処すればよいかのノウハウや、絶対やってはいけない注意点などを整理し、理解できた。スタッフとともに討論しながらの内容であったので、全員で共有できたといえる。
 次回の希望としては、狭義の医療安全には含まれず、ひいては接遇にも関わる点になるが、事務の立場でのトラブルやクレーム対応でも、さらにつっこんだ具体的なノウハウを研修できたら、さらにありがたいと感じた。
当院における医療安全の取り組み
 
 今回の研修を通じて、これまで独自に行ってきた取り組みを見直すよい機会になった。以下そのいくつかを記す。
 インシデント・アクシデント報告は、問題点を全員で共有しやすくし、客観的事象を正確に残し、将来のために分類しやすくする目的で、報告書を改訂した。分類方法も見直し、医療行為・管理(患者登録など事務管理)、施設(院内での外傷や器機の問題など)でわけることにした。どの患者かわかるような記載方法も改め、匿名性を高めた。
 また、共有性を高めるため、引き続き月1回全員で議論・検討することとした。
 以前から作成していた受付窓口での患者優先マニュアルを見直した。至急診てほしいと直接来られた場合、窓口レベルでできるだけ正確に病状を把握し、その重症度に応じてレベル分類し、すでにお待ちいただいている患者より、どこまで優先して診療するかを、窓口および看護師で判断できるようにした。最優先すべき病状の確認の仕方や判断に困ったときの対応方法をより明確に線引きし、必要以上に自己判断しないようにも努めた。
 窓口業務では、患者とトラブルになり、たとえば支払いを拒否された場合や、興奮状態におちいった場合など、その対応方法を全員で確認し、統一した行動がとれるようにした。
 
おわりに
 
 医療安全担当者スクールは、思っていたよりこわい話が多く、身につまされる内容であった。一生遭遇しないかもしれないものの、いざ起こったときにまず冷静に対応するためには、過去の多くの施設での経験を学び、疑似体験をしておくことは有用と考えられる。医院では、病院のように医療安全の専門職はいないため、サポートしてもらえるところがない不安があったが、協会に相談できるという安心も今回得られた。医療安全の研修は他にもあるが、よりオーダーメイドの研修会で、非常に有意義であった。
 最後に、当院のために、貴重な時間をさいて下さった講師の方に、この場を借りて深く御礼申し上げます。

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