理事長就任にあたって  PDF

理事長就任にあたって

世界に冠たる皆保険制度 守り発展させる運動の継続を

理事長 垣田 さち子

 京都府保険医協会は、敗戦後の混乱が続く1949年(昭和24年)6月に結成され今年で64年目を迎える。(国民と連携し)「医療保障制度の確立と制度運用の合理化の追求」「保険医の知識と技能の向上と生活権の擁護」遂行が設立の二大目的である。

 日本の医療制度は、少ない費用で(対GDP比OECD加盟国中16位)、世界一の平均寿命を達成している効率のよい制度として、国際的にも高い評価を受けているのは周知の事実だ。

 協会設立の2年前1947年の平均寿命は、男50歳・女54歳であった。それが今や男80歳、女90歳を念頭に人生設計を考える時代になった。世界もうらやむ長生きの国の実現に大きく貢献したのは、全国一律の国民皆保険制度の達成である。

 日本の医師達は医療の平等性を強く主張し、議論を重ね足並みを揃えて地道に診療活動を行い、国民のための医療提供体制の整備に尽力してきた。京都においても、医師会と保険医協会の二つの組織を持ち、医療側のみならず患者の立場に立った多面的な活動をくり広げ、国民医療の充実発展のために努力している。

 日本の医療者が、その患者さんの経済状況など二の次にして、とにかく目前にいる人の救命と健康保全に全力投入できるのは、国民全てが医療保険制度に加入し、等しく給付が保障されている国民皆保険制度のお陰である。診療した結果の報酬が約束されている有り難さは医師の精神に余裕を与え、誠意に基づく診療現場を実現させている。医療者と患者さんの間に生まれる安心感こそが私たちが誇れる宝であり、世界が一目置く優れた成果につながっているのだと思う。

 しかし、この国民皆保険制度も、時々の政府が打ち出す低医療費政策により弱体化、縮小化が図られ、常に医療の充実を求める国民との間断ない闘いの歴史を歩んできている。

 特に近年は、市場原理主義に基づく医療の産業化路線が声高に語られ、TPP参加の問題も目前に迫り、ついには憲法改定まで議論に上るという、国のあり方そのものまで問わねばならない、今までにない厳しい局面を迎えようとしている。

 社会保障の一翼として、国民の幸福に寄与する大事な医療保障の実現のために連綿と闘いが続けられてきた協会の歴史を振り返るとき、運動を担ってこられた諸先輩の知性と情熱に改めて頭が下がる。

 私も微力ながら、先輩達の積み上げてこられた成果を壊すことなく後輩達につなげ、日本の医療を守り発展させる仕事に力を尽くします。会員の先生方のご支援・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

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