理事提言/ワクチン問題の解決に向けて
政策部会 尾崎 望
来る2月18日、京都府保険医協会は保団連などと共同で、ワクチン問題で厚労省交渉を持つことになっている。意図するところは、小児のヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの定期接種化、不活化ポリオワクチンの導入、ヒトパピローマワクチンへの公費助成などの個別要求と、この冬の新型インフルエンザワクチンの実施に伴って、現場で生じた大混乱についての厚労省の総括を求めることなどを、主な内容としている。
新型インフルエンザワクチンでひどい目に合った医療機関は少なくない。当院で初めて接種したのは11月16日だった。その後も11月中はきわめて少ないワクチン数しか入手できず、12月にはいってようやく潤沢に入手可能となった。一方で、当院に新型インフルエンザで受診された外来患者さんのピークは、11月の第2週と第3週にあった。12月に入って患者数は着実に減少し、1月には著明に少なくなった。つまり明らかに後手に回った。この間に現場では、いろいろな混乱が起こった。
まず国が、接種開始を公表して、実際に現場でワクチンが入手できて実施可能となるまでに、10日から2週間のタイムラグがあり、住民からはいつから接種できるのかという電話が殺到した。また入手したワクチン数自体が、当初は極めて少ないために、接種対象の選択がきわめて困難であった。一方では比較的豊富にワクチンが入手できて、余っている医療機関もあったと聞く。そして多量に注文したものの、今となっては多くの子どもたちは既に罹患していて、もはやワクチンは必要がない。にもかかわらず返品は基本的に不可と聞く。こうした一連の混乱を、国と自治体のレベルできちんと総括しておかないと、まじめに地域の保健に取り組む医療機関はやる気を失っていく。何よりも次に控えているかもしれない強毒トリインフルエンザの流行においては失敗は許されない。
さて先日、協会はワクチン関連の代議員アンケートを実施(詳細は2月1日・8日号既報)。先述の厚労省交渉の要望と重なるが、ヒブワクチン定期接種化、小児肺炎球菌ワクチン定期接種化、不活化ポリオワクチンへの切り替えなど、いずれも70%から80%の方が賛意を示した。予防接種を推進し、ワクチンで防げる病気を可能な限りなくしていこうという立場からすると、心強い意思表示を受け取らせていただいた。しかし、いずれの設問においても、「その他」の表明が20%以上みられており、その理由は「よくわからない」ということであった。
これとの対比で「日本版ACIP」の設置について問う設問は、90%が賛意を示した。極めて見識ある回答と受け取った。極論すれば、これが今のワクチン問題の解決を示している。企業からも行政からも独立して、専門家からなる権威をもったワクチン問題の検討場所を設置して、そこが日本に必要なワクチンを提言し、安全性や有効性を評価する、こういうシステムを作ることが求められているとの意思表示である。この会員の声を具体化するように活動を進めていきたい。