理事提言/とんでもないTPP参加 狙いは混合診療解禁  PDF

理事提言/とんでもないTPP参加 狙いは混合診療解禁

政策部会 津田光夫
政策部会 津田光夫

 TPP(環太平洋連携協定)という言葉が、にわかに前景に躍り出てきた。加盟国間の関税を取り払い、100%の貿易自由化を目指すというもので、農業が壊滅的な打撃を受けると、与党議員の中にも反対論が多い。年頭所感で菅首相が「平成の開国」として打ち上げたのが発端だが、背後にある財界や米国の戦略から見えてくるものは医療にも教育にも、国民生活のあらゆる分野への影響が懸念される。いま日本の医療崩壊はさまざまな分野で進行し、特に救急医療現場のドミノ崩壊はさらなる崩落をも予測させるものである。これを救うはずの医療保険制度上の問題を見ても、高齢者医療をめぐる混乱や介護保険との整合性、リハビリ分野の切り貼りなど一貫性にかけた施策が目に付く状態にある。

 昨年6月、菅首相が「新成長戦略」の中で国際医療交流を新たな成長産業としてから、現場には新たな混乱が目立っている。朝日新聞2月17日「私の視点」では、民主党参議院議員の有田芳生氏が「医療ツーリズム日本にも」という投稿を寄せ、放射線医学研究所の重粒子線医療を例に挙げながら「富の創造」に向けて、海外から訪れる患者のための宿泊施設や観光とのセットなどで、「地域の産業構造を転換する道」として推奨している。またこれとセットになる形で今年1月には「医療滞在ビザ」が新設された。

 また神戸市では、先端医療センターが現実味を帯び始め、その周辺にがんや心臓疾患、移植再生医療などの専門病院群を作り、そこを中心に神戸市の経済を活性化しようという動きも進んでいる。これに反対する神戸市医師会のシンポジウムでも、さまざまな論点が立てられ世論と運動作りも急ピッチである。

 TPP参加がもたらす外国人富裕層への医療拡大は、民間医療保険にとっては最もおいしい話であり、保険診療と自由診療の混合診療への道筋をつける大きな転機ともなると考えられる。一方で国内の医療体制は、医師をはじめとした人材や機器の利用などが、自由市場優先になる危惧が大きく、医療崩壊から国民皆保険制度崩壊に拍車がかかる危険が大である。

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