理事提言/ささやかな抵抗  PDF

理事提言/ささやかな抵抗

保険部会 吉河正人
 少子高齢化が急速に進行する中、地域包括ケアシステム構築という名の医療、介護改革が推進されている。私のような零細開業医は、いわゆる「川下の改革」に直接影響を受けることとなる。しかし、川は源流から河口まで一つに連なっているものであるから、川下は当然の如く川上の付けを背負わねばならない。
 病床機能分化や平均在院日数短縮の縛りを受け、病院から締め出されていく人々の流れゆく先は?
 待機者約52万人(実情とは乖離した数字)といわれる特別養護老人ホームの整備は、先に決定した介護報酬の引き下げによって更にブレーキがかかると思われる。その上、深刻化する介護人材の不足により、稼働させる人間が確保できない箱物が増えるだけになりかねず、合併で過疎化が一層進み、自治体が管理運営に悲鳴をあげている公共施設と同じ存在になってしまうかも…、などと杞憂するのは私だけなのか。
 在宅療養を推進するための体制整備というが、過疎地を筆頭に家庭崩壊、地域崩壊が進む一方の現状においては、絵に描いた餅でしかない。「在宅」の主体は、都市部で増加が著しいサービス付き高齢者住宅(私の居住地域ではまだ閑古鳥が鳴いているが)に代表される配置医師不要の集団居住施設になっていかざるを得ないのではと感じる。
 サ高住といえば、一部悪質事業者による在宅医療費の不適切請求事例が問題化し、それを理由に2014年診療報酬改定においては、複数の同一建物居住者を同一日に訪問診療した場合の報酬が大幅に引き下げられた。訪問診療料の減額については、額の妥当性はともかく一定理解できるが、在宅時医学総合管理料の引き下げは到底承服できない。以前から主張しているように、一人ひとりの患者さんについて、それぞれ健康管理を行うのであるから、住んでいる建物が一軒家だろうが、集合住宅だろうが全く関係ない。理不尽な改定の是正要求を粘り強く行っていかねばならない。
 最後に、是正の実現まではと、私の実行しているささやかな抵抗を紹介し、会員諸氏のご批評を仰ぎたい。 
 当院から10km弱の山里に認知症高齢者グループホームができ、自宅へ訪問診療していた方が入居され、引き続き訪問することとなった。同様の入居が続き、複数の方を診る状況となっていたところへ今回の改定が直撃。納得できないので時間とガソリン代に目をつぶり、1日におひとりだけの訪問計画を立て、ほぼ連日通うこととした。医療費の無駄遣いとのご批評もあろうが、懸念した患者さんの混乱はなく、「今日は誰々さんやな」となっている。思いがけない付加価値も出てきた。行けば、その日の訪問対象でない方のお顔も当然目に入る。様子が違うことに気付けば、臨時に診察して迅速に対応できる。下り坂の体力ではあるが、この抵抗は当分続けよう。

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