【理事提言】「原子力基本法改悪」
―どさくさまぎれに、平和目的外も?―
政策部会 飯田 哲夫
原子力基本法・第1章(総則)は第1(目的)、第2(基本方針)、第3(定義)の3条から成る。そして(基本方針)では「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする」と定め、「平和目的に限定」し、「民主」「自主」「公開」の三つを原則とした。しかし、福島原発事故は「安全の確保を旨として」いなかったことを白日のもとにさらし、三つの原則にも疑問があるといわざるを得ないことが明らかになってきた。
しかしそれにもかかわらず、事故のどさくさにまぎれて、事実上国民に事前に知らすことなく、事実上国会で議論することなく、「平和目的に限定」に疑義が生じる改悪がなされたのである。
今回、第2条には上記を第1項とし、新たに第2項「前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする」が追加された。
「国の安全保障に資する」とは、一部には核の不正転用や核テロに対する保障措置(セーフガード)と捉える向きもあるが、安全保障(セキュリティー)という言葉は、防衛をその中心に置く言葉であり、それを保障措置というのは詭弁である。
すでに日本は核兵器に転用可能なプルトニウムを大量に保有し、海外からは「いつでも核兵器を作れる潜在的な核保有国」とも見なされる中、この改定は国際情勢に応じて法の解釈を変え得る、すなわち軍事利用の可能性を含意しているとして、核兵器開発の意図を疑われかねないものであり、断じて許されるべきものではない。
そして「国の安全保障に資する」との文言は、08年に宇宙基本法に組み込まれ、人工衛星の防衛目的利用への圧力が増しているといわれ、この表現は現実化しているのである。
また原子力に関する憲法ともいうべき基本法が、原子力規制委員会設置法という下位の法律、それもその附則で改定されるなど、まさにどさくさまぎれ、議会制民主主義の否定である。