特養の内部留保、施設規模でばらつき/財務省が調査
財務省は7月3日、特別養護老人ホームの内部留保額は施設ごとに大きくばらついており、内部留保が多額の施設ほど「利用者負担軽減事業」の実施率が低いとの調査結果をまとめた。入居者の要介護度の差や施設規模による収支差・内部留保額の違いを分析するよう厚生労働省に求めている。
調査結果は、予算の見直しや執行の効率化につなげるために財務省が毎年実施している「2012年度予算執行調査」の一つとして公表した。調査は各省庁の事業など75件を対象に実施しており、財務省は調査が終了した50件を公表した。
特養の内部留保については、厚労省が1087施設を対象に行った11年の調査結果がある。留保総額が3346億円で、1施設平均3億円に達するというものだ。しかし同調査は平均値を示すにとどめていたことから、財務省は詳細に実態を把握する財務状況調査を実施。厚労省が調査した1087施設を対象に留保額と施設規模の関係などを調べた。
調査結果によると、内部留保額が多い上位5%の54施設では1施設平均13.5億円の内部留保があり、総額(3346億円)の22%(727億円)を占めた。上位10%(109施設)の平均は10.5億円で、総額の34%(1149億円)だった。
一方、内部留保が少ない下位30%(326施設)の1施設平均額は0.25億円で総額の2%(81億円)にすぎず、内部留保がゼロやマイナスの施設も全体の8.5%(92施設)あり、内部留保額には大きなばらつきがあることが分かった。
規模別(入居者定員数別)の内部留保額も調査した。100人以上の施設では1施設平均5.6億円、30−99人で2.6億円、29人以下で1.0億円だった。入居者1人当たりの平均で見ても、100人以上の施設は0.048億円、29人以下は0.037億円と、大規模施設の方が多額の内部留保を有していた。
内部留保額と「生活困窮者等に対する利用者負担額軽減事業」の実施状況も調べた。同事業は、特養を運営する社会福祉法人が利用者の自己負担額を軽減する事業で、全国実施率は70.8%。調査では、留保額が大きい上位30施設の実施率は62.1%、下位30施設は73.1%と、内部留保額が大きい施設ほど実施率が低かった。
このほか「内部留保額上位の施設には多額の有価証券を保有している施設がある」「会計処理が不適切と見受けられる施設も散見される」とも指摘。財務省はこうした調査結果から、施設規模や施設入居者の要介護度差による収支差・内部留保額の違いと、その要因分析をすべきと提言した。社会福祉法人の財務諸表はホームページでの公表を義務付けるなどして、透明性・公正性を高めるべきとも指摘した。(7/4MEDIFAXより)