特区活用による「営利産業化」を懸念/日医総研WP
日医総研はこのほど、これまでに設置された特区での規制緩和などを整理し考察したワーキングペーパー(WP)を公表した。医療分野では公的保険範囲の縮小と医療の営利産業化の端緒となる懸念を払拭できないと主張。一体的に注視していく必要があると警戒感を示した。特区問題をめぐって日本医師会は、特区対策委員会を設置し検討を進めている。
構造改革特区は2003年に創設。混合診療の解禁や病院経営への株式会社の参入などが各地から提案された。保険外併用療養が創設される契機となったほか、06年には高度美容外科医療を提供する株式会社による診療所が横浜市に開設された。ただ、医療保険制度、医療提供体制の規制改革が全国展開に至ったものはなかった。
WPでは、特区から要望のあった規制緩和の約7割が全国展開していることを挙げて一定の成果があったと認めたが、日本経済全体の活性化という目的は達成できなかったと評価した。
総合特区は11年に創設された。12年9月1日までに国際戦略総合特区に7地域、地域活性化総合特区に32地域が指定されている。関西イノベーション国際戦略総合特区は、統合医療への保険外併用療養の適用や株式会社の病院経営への参入を提案したが実現には至っていない。
先端医療開発特区(スーパー特区)は08年に24課題が採択された。iPS細胞の応用や再生医療、革新的医療機器の開発などが採択された。
復興特区は東日本大震災の発生を受けて11年に設けられた。病院の医療従事者の配置要件の緩和、訪問リハビリテーション事業所の開設要件の緩和などが認められた。
考察では、復興特区での医師配置基準の緩和など地域活性化、地域再生に必要なものもあると評価した。一方、全ての国民に関係する規制緩和は特区での試行にも慎重であるべきと提言した。(10/15MEDIFAXより)