無過失補償制度の拡大を主張/日医総研WP
日医総研はこのほど、「患者の期待権と無過失補償制度−民事訴訟における過失責任主義の限界−」をテーマにしたワーキングペーパー(WP)をまとめた。1976年以降の医療事故関係訴訟の裁判例を検証。民事裁判の「過失責任主義」は限界に来ているとし、無過失補償制度の拡充を主張した。
WPでは、医療事故訴訟は手技のミスなどによる「作為型」から、医療水準に沿って適切な治療をしなかった「不作為型」に変化してきたと指摘。患者の死亡と診療行為の因果関係が認められない事案でも「期待権侵害」という概念を用いて、精神的損害を賠償する事例が増加してきたと分析した。
実際の裁判例8件を挙げ、「因果関係はないが、ある程度、死期が早められたことによる損害」を認める「延命利益論」から、「患者の期待権」を認める判例が現れる過程をまとめた。
WPは「患者の期待権は、学説の議論も十分なされているとはいえない分野」と指摘。期待権が実務で認められてきたのは「患者やその家族らの救済のため」とし「ある意味で司法制度の限界を意味する」と結論付けた。その上で、課題解決には患者の救済を図る方策が必要と主張。産科分野で導入された産科医療補償制度を、ほかの診療科にも拡充し、多くの患者や妊産婦らを救済する制度を構築すべきとした。(1/27MEDIFAXより)