災害時の救急体制を重点検討/総務省消防庁の救急検討会  PDF

災害時の救急体制を重点検討/総務省消防庁の救急検討会

 総務省消防庁は6月9日、2011年度初となる「救急業務のあり方に関する検討会」(座長=山本保博・東京臨海病院長)を開き、11年度は東日本大震災の発生を踏まえて救急業務の在り方を検討することを決めた。検討会に「災害時における救急業務のあり方に関する作業部会」を設置し、消防と医療との連携や、消防防災ヘリとドクターヘリの連携などについて専門的に審議することも決めた。報告書は12年1月をめどに取りまとめる。

 10年度の救急出動件数は546万件と過去最高を記録した。件数は今後も増加する見込みであることから、11年度の検討会では対応策を審議するとともに、大規模災害時の救急業務の在り方について制度見直しを検討する。

 事務局の救急企画室は、救命率の向上に向けた検討事項として▽救急搬送体制の強化▽消防と医療との連携▽消防防災ヘリとドクターヘリなどとの連携▽市民による迅速な応急処置体制▽救急資源の最適配置▽救急救命士の処置範囲拡大▽救急隊員の教育体制強化▽救急業務の高度化(ICTやビデオ喉頭鏡の活用)―の8項目を示し、被災地での救急出動件数や搬送人員などの実態調査を実施した上で検討を進めることを提案した。検討会はこれらを了承した。実態調査の結果は8月に開催予定の次回会合で事務局が報告する。大規模災害時の対応に参考となる調査項目については急いで調査することとした。

 新たな作業部会の部会長には、杏林大医学部救急医学教授の山口芳裕委員が就任した。福島県原子力災害対策センター(オフサイトセンター)で医療顧問の任務に当たっている山口委員は電話で会合に参加し、「今回の災害に当たり、消防と医療の連携の大切さを痛感したところだ。今回の経験・知見や反省を踏まえて実りある作業部会としたい」と述べた。

 会合では有賀徹委員(昭和大医学部付属病院長)が、人命を救う観点から消防本部の指令圏域を広域化する必要があると指摘し、広域化に向けた議論を継続するよう求めた。松元照仁・救急企画室長は消防組織法の改正で広域化を進めていると説明するとともに、行政的にも大きなメリットが望めるとして「作業部会で検討する専門的事項として、広域化の効果について調査することもできる」と答えた。

 また、災害時の自衛隊・警察・消防・自治体・医師会・医療現場(DMAT・JMAT)などの情報共有の在り方や通信手段の一体的な確保についても多数の意見が出た。(6/10MEDIFAXより)

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