災害拠点病院に新要件、耐震化・通信インフラ整備など/厚労省
厚生労働省の「災害医療等のあり方に関する検討会」(座長=大友康裕・東京医科歯科大救急災害医学分野教授)は9月30日、事務局が示した新たな災害拠点病院の指定要件などを了承した。3次医療圏に設置する基幹災害拠点病院(基幹病院)については、災害拠点病院としての要件に加えて▽病院機能を維持するための全施設での耐震構造▽複数の災害派遣医療チーム(DMAT)養成▽救命救急センターの指定▽病院敷地内のヘリポート―の要件が求められることになる。厚労省は10月29日の次回会合で報告書案を示す。年内に報告書をまとめた後、新たな要件などについて通知を発出する。
現基幹病院では当面の間、新たな要件となる耐震構造と救命救急センター指定、敷地内ヘリポートについて猶予することを合意した。複数のDMAT養成は2014年3月までに養成することを了承した。全国に57ある基幹病院のうち、全ての建物が耐震構造となっているのは39病院。同様に複数DMATは51病院、救命救急センター指定は49病院、敷地内ヘリポートは24病院となっている(いずれも11年度暫定値)。
●自家発電容量は通常の6割程度
2次医療圏に整備する災害拠点病院(拠点病院)についても指定要件を見直す。診療機能を持つ施設の耐震構造とともに、病院機能の維持に必要な全ての施設についても耐震構造が望ましいとする。
通信設備では、インターネット接続が必要な広域災害救急医療情報システム(EMIS)の活用を考慮する観点から、衛星電話の保有や衛星回線インターネットに接続可能な環境を整備することなどを盛り込む(整備済み87.3%)。また、東日本大震災で課題が浮上したEMISへの情報入力について、複数の入力人員を配置することを盛り込む。
電力供給については災害時に急性期医療機能を維持できるように通常時の6割程度の発電容量を持つ自家発電機を保有することとする(同99.8%、平均容量は通常の71%)。燃料も必要量として3日分程度を備蓄することとする。適切な容量の貯水槽を保有することも要件とし、停電時に使用できる井戸設備の整備、優先的な給水協定の締結に努めることとする。
現行では規定がない中長期の医療提供体制についても検討した。災害発生時に都道府県が日本医師会災害医療チーム(JMAT)などの救護班について、派遣元関係団体と派遣調整する組織として、災害対策本部内に「派遣調整本部(仮称)」を設置する計画を事前に策定することとする。また、保健所管轄区域や市町村では、行政と医療関係者の意見交換の場として「地域災害医療対策会議(仮称)」を設置することを合意した。
拠点病院ではない一般医療機関でも、人工呼吸器などの医療機器を使用する患者について医療機関が災害時の患者搬送先についての計画を策定しているか都道府県が確認することになる。(10/3MEDIFAXより)