潮受け堤防の開門命じる/諫早湾の漁業被害認定
有明海の漁業不振は、国営諫早湾干拓事業(長崎県) の潮受け堤防閉め切りが原因だとして、同海に面する長崎、佐賀、福岡、熊本各県の漁業者ら約2500人が、国に堤防の撤去や排水門の開門などを求めた訴訟の判決で、佐賀地裁は6月27日、南北排水門の5年間常時開放を命じた。諫早湾の漁業被害と閉め切りの因果関係を認めた。
判決理由で神山隆一裁判長は「有明海の漁業被害と堤防閉め切りの因果関係はデータは不足しており認めるのは困難だが、諫早湾内とその近くの漁場については相当程度の立証がされている」と認定。「中・長期の開門調査に国が応じないのは、原告が主張する被害の立証を妨害するものと言わざるをえない」と厳しく非難した。ただ、準備に必要な3年間は開門を猶予するとした。
しかし、国が佐賀地裁判決を不服として控訴したのを受け、原告団も7月11日、福岡高裁に控訴した。「開門を命じた佐賀地裁判決に国が従わなかったため」としている。
諫早湾の干拓には、総事業費約2500億円が投じられ、費用対効果や環境への配慮をめぐり、大型公共事業の在り方が問われてきた。漁業被害については4県の漁業者らが公害等調整委員会に干拓事業との因果関係認定を求める裁定を申請したが棄却されていた。【共同】