混合診療禁止の適法性認める/東京高裁で2審判決  PDF

混合診療禁止の適法性認める/東京高裁で2審判決

 保険診療と自費診療を併用する混合診療を受けた際、保険診療部分についても全額自己負担となるのは違憲だとして、神奈川県藤沢市の男性が国に対し「療養の給付」を受ける権利の確認を求めた訴訟の控訴審判決が9月29日、東京高裁であった。大谷禎男裁判長は、自費診療と保険診療の併用を容認し男性の受給の権利を認めた1審判決を取り消し、男性側の請求を棄却した。男性側は上告する意向を示した。

 男性は腎臓がん治療のため神奈川県立がんセンターで保険給付の対象となっている「インターフェロン療法」を受けていたが、主治医から保険給付外の「活性化自己リンパ球移入療法」(LAK治療)の併用を提案され、2001年9月から2つの治療を受けていた。訴状では、混合診療の禁止に法的な裏付けがないと主張し、「法律の根拠のない混合診療禁止制度による健康保険受給権の停止・制限は憲法に違反する」としていた。東京地裁の1審判決(07年11月)では「保険診療と自費診療を一体と見て保険診療部分も全額自己負担となる根拠は、健康保険法では見出しがたいといわざるを得ない」などとして、男性の受給権を認めていた。国は1審判決を不服として控訴していた。

 争点となった混合診療禁止の法的根拠について大谷裁判長は、保険外併用療養費制度(旧特定療養費制度)を導入した現行法制下でも、先進医療など一定の条件下の混合診療は限定的に保険給付を認めており、これ以外の混合診療は給付対象とならないとする国側の主張を支持。違憲性については「保険により提供する医療について、財源面からの制約や、提供する医療の質(安全性、有効性等)の確保等の観点から、範囲を限定することはやむを得ず、相当なものといわざるを得ない」とし、男性の主張を退けた。

 東京・霞ケ関の司法記者クラブで会見した男性は「判決には失望した。最高裁に上告して戦おうと思う」と上告する意向を示すとともに、「司法では解決は困難。政権も変わったし、立法的、行政的手法も考えていきたい」と述べた。

 一方、長妻昭厚生労働相は「現時点では、判決の具体的内容を十分把握したものではないが、国のこれまでの主張が認められたものと考えている」との談話を発表した。

 判決を受けて、保団連は9月29日、有効性、安全性が確立された新しい医療技術・医薬品の速やかな保険適用が必要とする談話を発表した。

 談話の中で、原告男性の保険受給権を認めた1審判決でも「混合診療そのものの解禁を認めたものではなかった」との見解を示した。安全性や公平性を考慮すれば「必要な医療は保険診療で」の原則を堅持した上で、保険適用の迅速化によって患者負担を軽減し受療権を保障することが必要とし、「引き続き保険給付範囲の拡大と審査承認期間の短縮に向けて全力を挙げる」とした。(9/30MEDIFAXより)

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