消費税「一度に5%はショック大」/内閣府報告書、保険免責も
内閣府は5月30日に開かれた政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」に、消費税増税の際の論点を研究した報告書を提出した。消費税の逆進性や、マクロ経済に与える影響をまとめたもので、増税の際は「段階的な引き上げ方が望ましい」と記載。引き上げ幅や時期については明記していないが、「一度に5%も引き上げるとショックが大きい」と書き込んだ。消費税増税分を社会保障に充てる場合の経済効果については「小さくない」とする一方、現行の社会保障制度は「大胆な見直しが不可欠」とし、具体策として、少額の医療費を医療保険の対象から外す保険免責制の導入を例示した。
報告書は、集中検討会議の議論の参考にするため、与謝野馨社会保障・税一体改革担当相がまとめるよう指示していた。「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」と題している。取りまとめの中心を務めたのは、同検討会議の吉川洋幹事委員と、東京大の井堀利宏教授で、有識者からのヒアリングなども行った。
報告書では消費税の逆進性の問題について「生涯所得で見た場合は縮小する」「生涯所得では比例税になる」などの研究結果を引用。逆進性の緩和策としての軽減税率導入については「効果が小さい」としている。消費税増税分を社会保障に充てた場合の経済効果に関しては「払った税金が受益として返ってくることを実感できれば、制度に対する将来不安が払拭され、経済に与える影響は小さくない」と説明。ただし、社会保障の機能強化と制度の持続性に確信が持てるような見直しが必要と考察している。
引き上げ方については、大幅に行うと経済の変動を増幅する恐れがあるため段階的に行うべきと指摘。経済への影響だけでなく、財政面の見通しや徴税コストなど、実務上の問題も踏まえて検討すべきと記載した。
財務省も消費税に関する資料を集中検討会議に提出した。消費税の段階的引き上げに関する実務上の論点をまとめている。軽減税率については「単一税率と比べ税減収をもたらす」「高額所得者にも効果があり逆進性対策の観点から効率的ではない」「逆進性対策には、低所得者向けの給付措置など、より有効な方策が考えられる」「事業者の事務負担などが増加する」などを理由に「単一税率が望ましい」と否定的だ。
内閣官房が前回の集中検討会議に示した試算では、社会保障改革や消費税増をしなかった場合、高齢者の医療、介護、年金に必要な社会保障給付費の公費負担と消費税収の差額が、2015年度に14兆円、20年度に18兆円に達する。提出された資料は、こうした状況を踏まえ消費税を増税するための、本格的議論に先立つ論点整理の意味合いもある。(5/31MEDIFAXより)