消化器診療内容向上会レポート  PDF

消化器診療内容向上会レポート

 消化器診療内容向上会を4月6日に京都平安ホテルで、京都消化器医会、京都府保険医協会、そしてエーザイ株式会社の共催により開催した。今回は、京都消化器医会が隔月で行っている総合画像診断症例検討会の審査会だよりに寄せられた質問点や、消化器合同審査委員会でこれまで議題にあがった事項を中心に、消化器医会理事で保険審査委員でもある佐々木善二氏と沖映希氏に解説をしていただきながら、保険診療上の問題点について具体的な検討を行った。

レセプトの摘要欄にコメント記載を 診断・治療の高度化・複雑化でより重要

 消化器疾患における保険診療上の問題点として、今回下記に示す8項目について討論を行った。

 (1)上部および下部消化管内視鏡検査時の塩酸リドカイン麻酔の使用量とその使用できる剤形(スプレー・ビスカス・ゼリー)の種類:請求できる塩酸リドカインの剤形は2種類までで、かつ総量が塩酸リドカイン量として200?を上限とする。ただし下部消化管においては、塩酸リドカインは経門脈系に吸収され、一度肝臓を通過するとほぼ全量が代謝されるため、使用量の上限を緩和して考えている。

 (2)難治性逆流性食道炎に対してのパリエット10?錠もしくは20?錠の1日2回投与する際の注意点:投与開始時に内視鏡検査で難治であることの確認が必要であること、また最長8週間までの投与が限度である。

 (3)ピロリ菌一次除菌前の抗生剤感受性検査は保険請求できるか:原則として保険請求は可能ではある。基金・国保の申し合わせで、この場合の感受性試験については査定の対象としないことになっている。

 (4)胃炎に対するピロリ菌検査や除菌治療請求上の注意点:胃内視鏡検査が必須であり、さらに重要なことは、胃炎だけでなく潰瘍においても、診療報酬明細書の摘要欄に内視鏡所見・結果を記載することが必要になった。

 (5)原発性胆汁性肝硬変診断確定後の抗ミトコンドリア抗体(AMA)検査は認められるか:原発性胆汁性肝硬変の臨床調査個人票を発行する際にAMAの値を記入する必要があるため、その趣旨を摘要欄に記載すれば実施可能である。

 (6)肝炎に対するフェリチン測定は可能か:慢性C型肝炎と、非アルコール性脂肪肝炎およびその疑いにおいては、3カ月に一度の実施が可能である。また慢性C型肝炎において瀉血療法を行っている場合は、試行回数+1回の測定が保険請求で認められている。

 (7)検査・手術前投薬としてのガスコンやガスモチンの投与について:検査前投薬としての保険適応がないので、60番検査では請求できない。また、20番投薬での使用(内服または屯服)に際しては、それぞれの適応病名が必要である。

 (8)HBVプレコア変異およびコアプロモーター変異遺伝子同定検査を実施した後に、HBs抗原、HBe抗原、HBe抗体などを測定できるか:治療効果判定のために実施したとのコメントを摘要欄に記載すれば、可能である。

◇  ◇

 診断と治療がより高度で複雑になって来たため、審査員のなかでもその判断に相違が生じることがある。診療報酬請求の際に重要なことは、誰が審査しても理解してもらえるように、摘要欄にコメントをしっかりと記したレセプトの作成が何より重要であることが改めて確認された。

(中京東部・岩野正宏)

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