消化器診療内容向上会レポート
消化器がんめぐる最新治療と検査を解説
消化器診療内容向上会を京都消化器医会、エーザイ株式会社、保険医協会の共催で4月7日開催、50人が参加した。冒頭、京都消化器医会の中島悦郎会長と保険医協会の関浩理事長が挨拶。3例の症例検討を行い、その後診療内容向上会として京都大学大学院医学研究科臨床腫瘍薬理学講座の松本繁巳特定准教授がOnePoint Lecture「消化器がん化学療法の進歩―個別化治療と遺伝子検査」について講演を行った。
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症例検討では胃病変3例が提供された。1例目はX線、内視鏡で胃がんと診断できるが生検で陰性であったために手術が4カ月遅れ、リンパ節転移を伴う進行がんであった症例で生検部位の検討、またがんの進行の早さも問題となった。2例目はヘリコバクター除菌後3年で潰瘍が発生、一見すると良性であるが辺縁の僅かな悪性所見から早期胃がんと診断できるがその他に離れた部位に不整びらんがあり、病変の広がり診断困難であった。3例目は集検で異常を指摘された噴門近くの隆起病変で、嚢胞状の粘膜下腫瘍で、上皮は過形成性ポリープ様を示し、内視鏡下切除後の組織標本から胃がんが診断された。極めて珍しい病変で、診断が困難以上にがんの発生母地が問題となる病変であった。
ワンポイントレクチャーとして京都大学臨床薬理学講座・松本繁巳特定准教授による消化器がん化学療法の進歩―個別化療法と遺伝子検査の講演があった。
まず、京大病院がんセンターの新病棟(積貞棟)、外来化学療法部を紹介していただき、その設備の充実、機能の良さに目を見張るものがあった。
最新の化学療法の話はまず「がんはゲノムの病気である」として遺伝子変異、体細胞変異がもたらすがんの種類の解説があった。ついでがんの個別化治療として胃がんにおけるHER2検査陽性例ではER抗体薬ハーセプチン(トラスツズマブ)が有効であり長期生存が期待できること、大腸がんに対してもアバスチン(ベバシズマブ):血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤や、アービタックス(セツキシマブ)およびベクティビックス(パニツムマブ):上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、などの分子標的抗がん剤の有効性について最新のお話であった。またこれらの分子標的治療のためには初回内視鏡検査を行った紹介元医院の生検組織標本を提出する必要性を述べられた。
最後にトータルケアとして、治癒できなかったがん患者の最後の過ごし方としての拠点病院とかかりつけ医、中小病院、訪問看護ステーション、ヘルパー等の連携が必要であると話された。(山科・福本圭志)
消化器向上会のようす