決議
税と社会保障の一体改革で消費税増税分を全て社会保障にという野田政権時代の「3党合意」はその後、総選挙・参院選挙による自公安定政権成立と並行した具体化の中で実質的に反故にされた。代わって増税による消費縮小・景気低迷に対する経済対策が前面に押し出され、来年度予算では5兆5000億円もつぎ込まれようとしている。この個々の財政支出を中医協並に厳しく精査・効率化すれば、医療充実に当てる増額分など容易に捻出できるはずである。しかし、今回の診療報酬改定は消費税補填分で糊塗したマイナス改定である。改定額不足の批判には一時的・限定的な補助金・基金で誤魔化そうとしている。今次診療報酬改定が2025年時点で予想される保険医療・介護給付費の5兆円削減に向けた第一歩になることが窺える。これでは小泉政権時代の毎年2200億円削減と同様に医療崩壊を招きかねない。我々は医療充実のプラス改定と患者負担軽減策を強く要望する。
医療の分野では他にも医療事故調査制度、第6次医療法改正、新専門医制度(含、総合診療専門医)など重要課題が山積している。また、TPPは戦略特区や保険業・薬価・知財などの側面から混合診療のなし崩し的拡大を図ろうとしている。問題はこれらの議論が実地臨床家の意見や意向を聞かず、患者実態を把握せずに、また地域差を無視して進められていることである。今何よりもなされるべきことは、世界に冠たる日本の医療を支えている医療現場の担い手を高く評価し、地域の医療ニーズに柔軟・的確に対応する医療提供体制を整備することである。現実から乖離し運用硬直化が目に見えている医療法改正と病床機能報告制度は医療現場や患者の中に不合理と不信・不満を持ち込み、混乱を拡大する恐れが強く中止すべきである。
また安倍内閣は積極的平和主義という御旗の下に国家安全保障会議創出、新防衛大綱策定など次々と戦争可能な体制整備に乗り出している。その一環として特定秘密保護法が制定されたが、その内容には国民・医療・医療者を拘束する項目も含まれており廃棄を要求する。我々は中国の覇権主義・軍事挑発にも、我が国の軍事大国化にも反対する。東アジア地域での平和と安定課題は相互理解・相互尊重と友好交流の話し合いの中で解決されることを望む。また国のエネルギー政策の基本を再生可能エネルギーへ転換し、原発再稼働などの原発依存から脱却することを求める。
そもそも国家予算は一時的な金銭ばら撒きによる景気浮揚策や軍備拡張・公共事業拡大ではなく、医療や介護、子育てや老後の不安のない社会の基盤作りに重点的に当て、もって雇用創出・消費の拡大を図るべきである。消費税増税の前にやるべきことがあると言われた国費のムダ削減諸策は結局なされぬままである。これらの財政課題に取り組み 、国民の立場に立って基本的権利としての医療や社会保障制度充実実現を果たす政策に転換すべきである。その礎として『社会保障基本法』の制定を求めるものである。
以上、本日の京都府保険医協会代議員会の名において決議する。
2014年1月30日
京都府保険医協会
第186回定時代議員会