民間病院の4分の1が赤字/日医総研WP、診療所では3分の1  PDF

民間病院の4分の1が赤字/日医総研WP、診療所では3分の1

 日本医師会総合政策研究機構はこのほど、「赤字民間医療機関のマネジメント上の課題」をテーマにワーキングペーパー(WP)をまとめた。2007年度の決算データから、民間の医療機関のうち病院では約4分の1、診療所では約3分の1が赤字だったと指摘。日本の医療提供体制は「民主導」であり、民間医療機関が国民の健康を維持するため極めて重要な国家戦略上の資源になっているとし、医療費抑制策の見直しなど、売上総利益の確保に向けた政策的対応が求められると提言した。

 WPは、TKC全国会発行の「TKC医業経営指標(M−BAST)08年度版」から得られた民間の病院685施設、診療所3178施設の07年度決算データを調査対象に分析した。TKC全国会は会員数約9600人の税理士・公認会計士の全国ネットワークで、株式会社TKCの会計システムを使用した財務データに基づき、TKC医業経営指標を集計している。

 病院は、黒字が509施設(74.3%)、赤字が176施設(25.7%)で、赤字病院は全体の約4分の1。診療所では、黒字が2104施設(66.2%)、赤字が1074施設(33.8%)で、約3分の1の診療所が赤字だった。赤字医療機関は病院・診療所ともに、事業規模が黒字医療機関よりも小さかった。赤字医療機関の従業員数・医業収益高・総資産はすべて黒字医療機関を下回る結果を得た。

 一方、赤字病院の従業員1人当たりの生産性は、黒字病院をわずかに上回ることも明らかになった。ただWPは、仕入れや人件費などの面で、赤字病院は黒字病院と比べて効率性を損ねていることがうかがえると指摘している。

 従業員1人当たりの売上総利益を見ると、赤字病院は黒字病院との比較で96.5%にとどまり、従業員1人当たり人件費は赤字病院が黒字病院を上回った。

 赤字医療機関は黒字医療医機関よりも過大な借り入れをしていることも分かった。WPは、経営不振に陥る民間医療機関から「過去の過剰投資に対する弁済が経営を圧迫している」と指摘する声が多く上がっていると指摘。今回の分析データはそれを裏付けているとした。

 ただ、民間の医療機関の資金調達は金融機関からの借り入れなど間接金融にほぼ限定され、特にバブル期に過大評価された土地建物を担保に安易な融資が行われていた側面もあると指摘。別途検討する必要があるとした。(4/10MEDIFAXより)

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