死因究明制度、賛否の溝は埋まらず/日本医学会の公開討論会
日本医学会は7月28日、診療関連死の原因究明制度創設に関する公開討論会を開いた。参加者からは捜査機関への通知事例や医療事故に対する業務上過失致死傷罪の在り方などについて、さまざまな異論や疑問点が噴出。制度創設の賛否をめぐる議論は平行線をたどり、医療界の意見集約の難しさを印象付けた。日本医学会はこの日の議論を踏まえて、制度創設に向けた見解を近くまとめる方針だ。
討論会では、永井良三・日本内科学会理事長、高本眞一・日本外科学会理事、堤晴彦・日本救急医学会理事、並木昭義・日本麻酔科学会理事長、木下勝之・日本医師会常任理事、西澤寛俊・全日本病院協会長の6氏が、各学会・団体の制度に対する意見を述べた。
永井氏は制度創設に向けて厚生労働省が示した第3次試案と「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」の関係性や、大綱案公表時に示された厚労省、法務省、警察庁の3省庁合意の範囲などについて不明確だと指摘した。捜査機関への通知事例についても、故意、隠ぺいなどに加えて「重過失に相当する悪質事例に限るべきだ」と提案した。
堤氏は「同じ業務上過失致死傷罪に問われる道交法違反に関して判断基準が明確に示されている。医療事故に関してはそれがまったくない。法曹界と医療界が同じ土俵で判断基準を議論すべき」と主張し、医師法21条改正の議論の前に医療界が納得できない刑事訴追の在り方を議論すべきだと訴えた。並木氏は「国際的な視点で、WHO (世界保健機関) の医療安全に関するガイドラインと比較した場合、不明瞭な点がある」などと指摘し、さらなる検討が必要だと主張した。
総合討論では、来場した現場医師からも賛否の激しい議論が交わされた。産婦人科の開業医が「福島県立大野病院事件と同様な危機にさらされている現場は薄氷を踏む思い。細かいところで異論はあるだろうが、できるなら次期臨時国会で法案を通してほしい」と訴えた。一方で、現状でのマンパワーで制度を創設する実現性や、調査委創設による院内事故調査委員会の意義付けに対する疑問も出た。(7/29MEDIFAXより)