検討課題は「給付範囲」「成長産業」/一体改革で経産省審議会
政府の社会保障・税一体改革に関連し、経済産業省は3月7日、経済産業相の諮問機関である産業構造審議会・基本政策部会(部会長=伊藤元重・東京大大学院経済学研究科教授)を開き、社会保障改革に関する検討を始めた。経済成長と社会保障制度の持続可能性を両立させるため、負担の在り方や社会保障給付の効率化などを議論。4月下旬をめどに提言をまとめ、政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」に提出する。
経産省は一体改革について「医療・介護費の増大が想定される中でシステムの効率化抜きでは負担が青天井になる。経済活力を損なわない負担・給付の在り方が重要」と指摘。部会に対し▽社会保障給付の効率化▽現役世代や事業者の負担の在り方▽「成長産業」としての医療・介護・健康関連分野への民間企業の参入促進▽女性や高齢者などの就業環境の整備―を検討課題として示した。
給付の効率化では「本来求められる機能を再確認し、本当に必要とする人に給付が行われるようメリハリの利いた給付を行うことが必要ではないか」と提案した。公的医療・介護保険の対象を明確化して社会保障費抑制につなげると同時に、医療機関と民間企業の役割を線引きすることで、企業による新たなビジネスの創出にもつなげる考えだ。
●混合診療の全面解禁求める声も
この日の会合では、経済成長と社会保障の在り方について意見交換した。小塩隆士委員(一橋大経済研究所教授)は「給付を増やすなら負担増しかないが、現役層の負担増は限界。給付の効率化が不可欠」と指摘。経済同友会社会保障改革委員長の須武男委員(バンダイナムコホールディングス会長)も「社会保障の範囲をあらためて議論して、真に必要な人に厚く重点的に給付すべき。既得権益を放棄する意識も国民側には必要」としたほか、日本経団連社会保障委員長の森田富治郎委員(第一生命保険会長)も「共助という社会保険の世界は限界にきているが、公助といって消費税を無限に上げることはできない。自助の役割をもう一度見直す必要がある」と述べた。
経済団体からは、関連産業育成のため、混合診療の全面解禁や株式会社の医療機関への参入などの規制緩和を求める声も上がった。(3/8MEDIFAXより)