梟(ふくろう)  PDF

梟(ふくろう)

向井滋彦(西陣)

 ふくろうの置物は、日本では「不苦労」(苦労知らず)とか「福来」(福が来る)とか語呂合わせで縁起物として扱われ、全国のどこのお土産店でも見かけるありふれたものかと思います。

 ところが、私が最初に手にしたものは、ブラジルのふくろうでした。二十数年前に神戸の病院に出張勤務していた際にいただいたものです。その病院の臨床検査技師長さんが、京都へ戻るときの餞別としてプレゼントして下さいました。ごく小さな宝石のような石をいっぱい張り付けた小さな置物でした。「玄関に飾るといいですよ」とおっしゃって、おそらく魔除けとか幸運が玄関から来るとかそういった意味だったと思います。その後十数年を経て、北野天満宮の縁日、いわゆる「天神さん」の日に、露店でインドの透かし彫りのふくろうを見かけ、何故か魅かれるものを感じて買ってしまいました。そして間もなく、京都の書店の丸善(残念ながら今はありませんが)でふくろうフェアーが開催されていて、同じような透かし彫りのふくろうを何個か購入し、さらに仲間が増えることとなりました。丸善とふくろうの関係はいかに? ですが、おそらく以下のとおり、ふくろうが知恵を意味するからでしょう。

 古代ギリシャ「アテネ」の守護神アテナが従えていたのがふくろうで、聖なる鳥とされていました(かのパルテノン神殿に祀られている女神が、アテナです)。アテナは、学問・知恵・技芸の神で、ふくろうが知恵の象徴といわれる由縁がここにあるようです。

 ということで、凡人の考えとしてもっと知恵を授かろうと思い、ふくろうの置物を集めるようになってしまいました。実は結構奥が深くて、ふくろうは世界中で愛されています。その証拠に私が所有する100以上のふくろうのコレクションには、中国、台湾、インドをはじめ、メキシコ、ウルグアイ、スペイン、ギリシャのものがあります。

 最後に、私のお気に入りのふくろうを写真で紹介しておきます。ヘレンド社(ハンガリー)の陶器製の小さなものですが、愛くるしさでは光一(ぴかいち)です。

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