東日本大震災から1年半/府内の被災者の現状と課題  PDF

東日本大震災から1年半/府内の被災者の現状と課題

 東日本大震災から1年半が経過した現在、京都府内には避難者270世帯、746人が住んでいる(10月12日現在、京都府災害支援対策本部発表)。とりわけ、福島第一原子力発電所付近の住民は、震災の被害だけでなく放射線の影響による健康被害の不安をも抱えている。1日も早く、すべての被災した方々がその人たちらしい暮らしを取り戻せるよう、総合的・包括的な支えが必要である。

来院時の取り扱いについて

 2012年10月1日以降、被災した方々が医療機関に来院した場合の一部負担金の取り扱いについては、免除証明書をお持ちの方で、かつその免除証明書の有効期限が切れていない場合のみ、免除対象となる(2013年2月28日まで)。9月30日までは免除証明書の提示が不要の場合もあったが、10月1日以降は有効期限が切れていない免除証明書を提示した場合にのみ窓口負担免除となるので、ご留意いただきたい。

 国から示されている助成対象地域は福島県の広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村(下図)。なお東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う警戒区域等以外の被災者も、加入の医療保険の保険者により、引き続き窓口負担が免除されることもある。被災者のうち府内に避難した方で、八幡市・京丹後市・南丹市・木津川市国保に加入している方に対して、一部負担金を免除している。被保険者証の他に市町村独自の免除証明書を持参された場合は、一部負担金は発生せず、現物給付となるのでご注意いただきたい。

被災者を支援する法となりうるか

 6月21日に国会成立した「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」は、極めて重要な意味を持っている。同法は理念法・基本法であり、国は法律に基づいた制度や支援策の具体化を求められている。

 同法は、全会一致で可決・成立した。この法成立について、日本弁護士会も被害者とその支援者の声、そして与野党の国会議員の努力が国を動かした結果と声明を出している。

 同法には従来にない特徴的な記述がいくつかある。

 一つめは、事故により放出された放射性物質の危険性は「科学的に十分に解明されていない」(第一条)と認めたこと。それを前提として二つめに、国が行う被災者生活支援等施策は、対象とすべき被害者が「支援対象地域」(法では「その地域における放射線量が政府による非難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域」)に住んでいても、自主的に避難した他の地域に住んでいても、同様に適切に行わねばならないとしたこと(第二条2)。三つめに「原子力を推進してきたことに伴う社会的な責任」が国にあることを認め(第三条)、政府に対し、施策実施のための必要な法制上または財政上の措置を講じるよう義務付けていること。四つめに「放射性物質の汚染による調査」を「きめ細かく」「継続的に」行い(第六条)、その結果も踏まえて「支援対象地域」は毎年見直すとしたこと(付則)。そして、「被災者たる子ども及び妊婦が医療を受けたときに負担すべき費用」の減免等の施策を国が講じるよう定めたことである。

 支援対象地域の設定や、医療費減免の対象者を妊婦・子どものみとも取れる文言であること、その医療が「放射線による被ばくに起因しない負傷又は疾病」を除いている点等、いくつかの改善課題を含みつつも、この法律の積極面を活かし、今後の施策具体化が真に被害者の支えとなるものにしなければならない。それを決するのは、引き続き被害者自身と被害者を支援する人たちの取り組みにかかっていることはいうまでもない。

協会が取り組むべきこと

 協会はこうした各所の動きを注視しつつ、府内の避難者とも連携を図るべく活動を行っている。まずは避難者を含む被災した方々の実際の声を可能なかぎり集約し、協会の課題としてどう取り組んでいくかを検討しながら、会員各位へ情報を提供していきたい。また、会員各位とともに「被ばく」問題について議論できる場を設け、協会としての声を被災した方々へ届ける活動も必要だ。

 市民に対しても「一緒に考える」をテーマに被ばくについての公開講座を重ねている。1回ごとの参加人数は20人ほどだが、各地域へ出向き、「脱原発」も含めた意見交換の場として、今後も引き続き開催していきたい。

 さらには、京都府が「東日本大震災に係る京都府内への避難者に対するアンケート」を実施している。協会としても医療者からの独自のアンケートを行う予定だが、このアンケートからも実態に即した声を拾っていきたい。

(図)経済産業省ホームページ・原子力被災者支援「避難指示等について」より 

(図)経済産業省ホームページ・原子力被災者支援「避難指示等について」より

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