東北メディカル・メガバンク構想を了承/医療イノベ会議
政府は6月16日、首相官邸で第2回医療イノベーション会議を開き、東日本大震災の復興プランを盛り込んだ「医療イノベーション推進の基本的方針」を了承した。高齢化社会を迎える中で、医学分野の技術革新と医薬品・医療機器の産業振興を目指す。震災復興の予算に絡めながら政策を実現したい考えだ。
会合では、東北大大学院医学系研究科長の山本雅之氏が、東北地方の公的病院復興策と基礎医学の振興策を連動させた「東北メディカル・メガバンク構想」を提唱し、大筋で了承された。東日本大震災で壊滅的被害を受けた東北地方の公的病院をゼロから建て直す際に、ゲノム医療などにも対応できる最先端の医療機関として再構築を図る構想。住民の診療情報と診療サンプルを保管し、患者のゲノム情報と合わせて一元的に管理する「複合バイオバンク」を立ち上げる。コアセンターは東北大に設置する計画。ただしバンクの利用権限は東北大に限らず、日本全国の研究者がアクセスできるようにして生命科学の底上げを図る。
海外に引けを取らない最先端システムを東北地方に構築することで、将来訪れる個別化医療の時代に活躍できる医師を育てていく。人の移動が比較的少ない東北地方の利点を生かして大規模コホート研究に取り組み、疾病と遺伝・環境素因との関係を明らかにしていく。また、被災地に研究基盤を整備することで、医師が働きたくなる環境を整え、医師不足の解消も目指す。得られた研究成果は医療行為や疾病予防として地元住民に還元する。さらに研究成果を産業応用し、日本の経済成長にもつなげていきたい考えだ。
会合には枝野幸男官房長官をはじめ、仙谷由人官房副長官、関係官庁の政務三役や、与党、大学、産業界の関係者らが出席した。医学や産業の発展に関するフリーディスカッションでは、「基礎研究分野に進む医師をどのように確保していくかが重要」などの声が上がった。
●「創薬支援機構」創設へ財政支援を検討
また、大学や研究機関に眠っている創薬シーズを実用化につなげていく「創薬支援機構」の創設に向けて財政支援を検討することも了承された。ただ、「類似機関の見直しを前提に」という条件が付いた。医療イノベーション推進室の中村祐輔室長は会議終了後の会見で、創薬支援機構の実施母体について「例えば厚生労働省の所管で言えば、医薬基盤研究所などが類似機関に当たる」と説明した。(6/17MEDIFAXより)