有床診の防災対策実態を調査
設置のための補助求める声強く
10月に福岡で発生した有床診療所での火災死亡事故を受けて協会は、有床診療所を対象に緊急実態調査を実施した。今回の火災で被害が拡大した原因として、防火扉の不具合や不十分な避難誘導体制などが指摘されている。しかし、全ての診療所に防火扉やスプリンクラーの設置義務があるわけではなく、施設の規模に応じてその基準が定められている。有床診療所における防災設備、防災対策の現状を調査することで、協会としてその対策と、公的な支援の要請等につなげていきたい。
有床診療所の会員130医療機関のうち回答は35(27%)。すでに無床に変更もしくは、変更手続中と回答した4件は母数から除いた。ただし病床の稼働については、回答医療機関のうち51%がない状態にある。
スプリンクラーは1割 防火扉は7割が設置
スプリンクラー設置については11%があり、86%がない(図1)。いずれの施設も設置義務の対象外ではあるが、設置希望はあっても経済的理由からできないとの回答もあった。
防火壁・扉の設置については69%があり、29%がないと回答(図2)。
自動火災報知装置の設置については91%があり、6%がないと回答(図3)。ないと回答した2医療機関とも病床稼動はない状態。
避難訓練の実施状況については、なしが37%、ありが57%。消防法は年2回以上としているが、2回行っているところが11医療機関、1回は9医療機関。
夜間・休日の避難誘導態勢については、ある46%、ない43%。当直体制の有無については、ある43%、ない26%。
「他人事でない」と危機感
今回の事故の感想について、「お亡くなりになられた方のことを思うと本当に悲しい。このようなことが起こらないように、再度点検の必要を感じた」「規模、病床ともに当院と非常に似た施設での事故であり、危機感を感じた」など、我がことのように感じたという感想がほとんど。
今後の対応および要望について、「早急にマニュアルを見直し訓練していきたい。有床診療所における火災の訓練や防火などの情報を共有したい」「事故発生による重大性は理解できるが、その都度、施設基準や設備の改善を求められても、零細な診療所では対応できないこともあり、補助制度などの全面的な整備を求める」「診療所といえども一人でも入院があるところでは、人命尊重の意味から防火扉の整備や避難誘導体制の充実が必要と思われるので、それに対する支援が必要である」などであった。