最高裁「医師不足」に懸念表明/小児科医の過労自殺訴訟で和解
過労によるうつ病で1999年に自殺した小児科医中原利郎さん(当時44)の遺族が、心身への十分な配慮を怠ったとして、勤務先の病院を運営する立正佼成会に損害賠償を求めた訴訟は7月8日、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)で和解が成立した。和解条項で医師不足解消への取り組みが「国民の健康を守るために不可欠」との一文が盛り込まれた。
最高裁は3月、日本でより良い医療を実現したいとの観点から双方に和解を打診。医師不足を懸念した異例の和解成立となった。
和解は、立正佼成会側が労災保険給付金とは別に和解金計700万円を支払うことなどが主な内容。
遺族側の代理人弁護士によると、和解条項には「医師不足や医師の過重負担を生じさせないことが国民の健康を守るために不可欠であることを相互に確認する」と記された。
遺族は今回の訴訟のほか、労災認定を求め2004年12月に提訴。07年3月の東京地裁判決は自殺を労災と認め、そのまま確定した。しかし約2週間後にあった今回の訴訟の一審判決(07年3月)は、自殺原因を過労と認めずに請求を棄却。
08年10月の二審東京高裁判決は「全国的な小児科医不足の中で医師の欠員に直面し、負担があった」とする一方、「病院は精神障害を認識できなかった」として一審判決を支持した。
一、二審判決によると、中原さんは87年4月から立正佼成会付属佼成病院(東京)で勤務。99年1月に小児科部長代行に就いた後、うつ病を発症し同8月に自殺した。【共同】(7/12MEDIFAXより)