日本脳炎予防接種をめぐり議論スタート/厚労省検討会
厚生労働省の「予防接種に関する検討会」が7月25日に開かれ、日本脳炎の予防接種をめぐる今後の課題について議論をスタートさせた。
日本脳炎の現行ワクチンは急性散在性脳脊髄炎(ADEM) との因果関係が指摘され、厚労省が予防接種の積極的勧奨を差し控えるように求めた通知を出したことで大幅に接種率が低下した。一方、現行ワクチンの問題点を解消することが期待される新型ワクチンは2009年4月にも供給開始を見込む。同検討会はこうした状況を踏まえ、日本脳炎の予防接種を今後どのようにすべきか議論し、提言をまとめる。
同日の検討会で加藤達夫座長(国立成育医療センター総長) は、今後の議論の前提として(1)疾病予防の観点からワクチン接種を継続する、(2)ワクチン接種の疫学的研究を進める、(3)新型ワクチン供給後の予防接種実施体制を検討する―との方向性を示した。さらに厚労省に対し、あらためて日本脳炎の予防接種について実施スケジュールを提案するよう求めた。
マウス脳を用いて製造する現行ワクチンは05年5月にADEMとの因果関係が予防接種健康被害認定部会で認定され、厚労省は同月、一律的な予防接種の積極的勧奨を差し控えるように通知した。その後、全国のほとんどの市町村で予防接種が中止され、ワクチンメーカーもワクチンの新規原液製造を中止した。ただ、厚労省は翌06年8月にあらためて通知を出し、感染リスクが高く、希望があった場合は適切に接種の機会を確保するよう求めている。
検討会で宮崎千明・福岡市立西部療育センター長は、接種希望者は増加傾向にあるとの見方を示し、厚労省に都道府県別接種件数の資料提示を求めた。永井恵・豊島区池袋保健所長も都内23区で接種件数は増加しているとしたほか、竹本桂一・日本小児科医会常任理事も川崎市でも同様な傾向にあることを指摘した。
一方、マウス脳を使用しない組織培養法による新型ワクチンについては、化学及血清療法研究所と阪大微生物病研究会の2社から薬事法上の承認申請が出されている。同日の検討会では阪大微研から、08年3月上旬に新型ワクチンの追加臨床試験が終了しており、その結果を8月末をめどに提出するとの見通しが示された。供給開始時期は09年4月を見込んでいるという。新型ワクチンは、局所副反応の発生率が現行ワクチンと比べて高いことなどから、接種に適した用量を再検討して、あらためて臨床試験を行うことが求められていた。(7/28MEDIFAXより)