日本ローカル鉄道の旅 その6(またまた特別篇)
第3日 女<ルビ/おな>川―前谷地<ルビ/まえやち>―気仙沼―盛<ルビ/さかり>―釜石―宮古―久慈 307km
(写真上)気仙沼名物駅弁、これは逸品!
(中)三陸南リアス三陸駅ホーム吊し柿のすだれ
(下)シャンデリア輝く車内
三陸鉄道記念乗車証明書
南北に分断されても健気に走る三陸鉄道
今日は6時40分早だちの朝食に焼きたての御当地サンマが出た。快晴の女川駅に着いたところでハプニング発生。添乗のFさんが旅館に大事なバッグを忘れた、という。この女傑はその時少しもあわてず、「タクシーで戻って、途中の駅で必ずこの列車に追いつきます」と御一行をホームに送り出しておいてトンボ帰り、その言葉通り彼女は、女川から2つ目の無人駅(池田)で悠然と乗り込んで来て、御一行の拍手を受けた。
女川―石巻―前谷地―と石巻線(45km)、前谷地で気仙沼線(前谷地―気仙沼73km)に乗り換える頃はくもり、気仙沼では時雨と、これまた東北の天気は目まぐるしい。
気仙沼で大船渡線(気仙沼―盛44km)に乗り換えると気仙沼名物駅弁「黄金竜<ルビ/こがねりゅう>の海めし」が配られる。黄金の名は、昔この辺りが有数の金の産出地であったことと、御飯の上に盛り上げたウニから由来する由、気仙沼港水揚げのメカジキの煮付がすばらしい逸品駅弁であった。
盛<ルビ/さかり>から第三セクターの三陸鉄道南リアス線(盛―釜石37km)に乗る。三陸リアス海岸北上も、ギザギザの海岸線がチラホラ見えるだけで、ほとんどがトンネルの中、第三セクターのディーゼル車が健気に走る。三陸駅では、海の見えるホームに、数え切れない程の吊るし柿がすだれの如くぶら下がっている。列車はしばし停車、見とれていると乗務員さんが「地元のボランティアさんの提供です。お一人1個だけ食べていただけます」、早速ホームに降りて食べる人もあった。家内(鉄子さん)によると「中々おいしい」そうな。そんなことよりも、時々見える海岸線と山肌の紅葉が陽光に映えて、すばらしい車窓風景であった。
釜石―宮古(55km)は山田線で吉<ルビ/き>里<ルビ/り>吉<ルビ/き>里<ルビ/り>など面白い駅名がある。宮古では乗り換え時間を利用して、今回唯一の観光「浄土ヶ浜」見物に出かける。この頃から天候が一変、みぞれまじりの氷雨となり、寒くて観光どころではなく、早々にタクシー車内に戻る。
宮古―久慈(71km)は再び三陸鉄道北リアス線になる。JR山田線が無惨にも三陸鉄道を南北二つに分断している形である。思えば殺生なことをしたものだが、三陸鉄道は第三セクターのトップランナーで、その頃はJRが地元に対して強面に出られたのか。
宮古発久慈行北リアス線は、いまはやりの観光用レトロ列車で、天井と窓際にシャンデリアが輝く豪華な車内は、さながら高級クラブに迷い込んだよう、下校の高校生達が、テスト前かノートをひろげているのがなじまない車内風景であった。この線はトンネルが多く、田<ルビ/た>老<ルビ/ろう>、摂待<ルビ/せったい>、小<ルビ/お>本<ルビ/もと>のトンネルは某鉄道ミステリーの中で列車の消えるトリックに使われた所である。日はすっかり落ちて、思いこもごもの車窓に小雪がちらつく中、久慈到着。この夜は駅前の久慈Gホテルに投宿することになっている。(続)