日弁連が指導・監査制度の改善で意見書
選定理由の開示、弁護士立会、録音・録画の権利求める
日本弁護士連合会(日弁連)・人権擁護委員会は8月22日、「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」を発表、厚生労働大臣および都道府県知事に提出した。日弁連が、保険医療機関および保険医の指導・監査に対して、第三者の立場から実態調査し、意見をまとめたのは初めて。
日弁連は、同意見書の中で、(1)個別指導の選定理由を開示すべき(2)指導対象とする診療録は適切な準備を行うために必要かつ相当な一定期間前までに連絡すべき(3)指導への弁護士の立会権を保険医の権利として認めるべき(4)指導・監査の実態の事後的検証を可能とすべく、録音・録画を保険医等の権利として認めるべき(5)患者調査を行う場合、保険医の信用の毀損等を最小限とし、調査結果は保険医等に開示すべき(6)個別指導は安易に中断しないよう、また、中断期間を短期間にとどめるべき(7)指導と監査の機関を分離するとともに、苦情申立手続を導入すべき—以上7点について、改善等を求めている。
今回の意見書は、自身もしくは家族が不当な指導・監査を受け、行政訴訟等に訴えた医師、歯科医師4人が、「指導、監査」における運用の実態調査と関係機関への是正勧告などを求め、2010年4月28日に日弁連・人権擁護委員会へ提出した要請書を受けて取りまとめられたもの。
山梨県甲府市のみぞべこどもクリニック院長の溝部達子氏は、この4人のうちの1人。保険医療機関および保険医の指定取消処分の取消を求め、国を訴えた裁判で勝訴した経験を持つ。現在、弁護士、保険医等で作る「指導・監査・処分改善のための健康保険法改正研究会」の事務局長を務めている。溝部氏は9月1日、意見書発表を受けて厚労省内で記者会見し、「健康保険法には、患者の権利も、医療者の権利も書かれていない。日弁連の意見書を機に、ぜひ法律を見直してもらいたい」と訴えている。
意見書全文は、日本弁護士連合会ホームページに掲載されている。ホームページトップにあるサイト内検索に「指導・監査 意見書」と入力し検索すればご覧いただけるので、お目通し願いたい。