施設職員による高齢者虐待、3年連続で増加/08年度実態調査  PDF

施設職員による高齢者虐待、3年連続で増加/08年度実態調査

 厚生労働省は11月20日、2008年度に行った高齢者虐待防止法に基づく高齢者虐待実態調査の結果を発表した。介護施設職員らによる虐待、家族や同居人による虐待ともに、06年度の調査開始以来3年連続で増加した。件数の増加について、厚労省は「高齢者虐待防止法施行3年目に入り、事業者や住民の理解が進んだことが背景にある。相談・通報に至っていない事例も水面下であると考えられる」(老健局高齢者支援課認知症・虐待防止対策推進室)としている。

 全国市区町村に寄せられた介護施設職員による高齢者虐待の相談・通報は451件で、前年度より72件(19.0%)増加した。市町村や都道府県が事実確認調査を行い、虐待と判断された件数は70件(前年度比8件増)だった。

 虐待と判断された事例を施設種別で見ると、「認知症対応型共同生活介護」31.4%、「特別養護老人ホーム」30.0%、「介護老人保健施設」15.7%の順。虐待者は「介護職員」が89.5%、「40歳未満」が46.5%を占め、若手職員に多い傾向が見られた。被虐待高齢者は70.2%が女性で、過半数が80代だった。

 虐待事例が発生した施設に対し、自治体が介護保険法または老人福祉法に基づく「報告徴収、質問、立入検査、指導」を行ったのは23件、人員や設備の運営基準が順守されていないことに伴う「改善勧告」は3件あった。

 同居人や家族ら養護者による虐待の相談・通報件数は2万1692件(前年度比8.6%増)。虐待と判断された事例は1万4889件で、前年度より1616件(12.2%)増加した。虐待の種別・累計では「身体的虐待」が63.6%で最も多く、被虐待高齢者は女性が77.8%を占めた。虐待者は息子(40.2%)が最多だった。

 要介護認定を受けていた被虐待者の状況は、「要介護3」21.5%、「要介護2」19.5%の順。被虐待高齢者全体のうち認知症日常生活自立度2(何らかの支援がないと生活できない状態)以上の人は45.1%で、認知症症状のあるケースが多い傾向が見られた。

 市町村に義務付けた「高齢者虐待の対応窓口」は、99.2%が設置済みだった。一方、関係専門機関介入支援ネットワークの構築や、独自の対応マニュアルなどの作成の実施率は4割台にとどまった。(11/24MEDIFAXより)

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