新年度にあたって  PDF

新年度にあたって

医療安全対策部会 副理事長 林 一資

医事紛争の状況と今後の協会の医療安全対策

 協会の医療安全対策は2015年度で55年を経過することとなった。これもひとえに協会会員の皆様のご協力のおかげであることに感謝の意を表するとともに、今後とも協会の医療安全対策をはじめ、医師賠償責任保険についても、ご理解ご協力をお願いし、なお一層のサービスを心掛けていきたい。
 少し予告させていただくには早いが、9月12日(土)に55周年記念の「医療安全シンポジウム」を開催する。開催後にはシンポの内容に加え、45年分の統計データを全会員に対して公表する予定にしている。ここではデータから読み取れるものを一足先にご紹介したい。
 (1)医事紛争は10年毎にその様相を激変させる(2)医事紛争の件数は10年毎に1・4倍に増加してきたが、2010年代前半では減少傾向が認められる(最悪の時代は過ぎた)(3)近い将来(2010年代後半)において、増加傾向に転じる可能性が危惧される(4)医事紛争の増減は、診療所ではなく病院によるところが大きい(5)マスコミ報道の医療に対する影響は甚大で、世論のみならず時に医療過誤の判断基準さえ左右する(6)診療科目によるリスクは時代に影響されない(医事紛争に遭遇する医師数は上位から「内科医」「外科医」「整形外科医」「産婦人科医」で、今後ともこの順位は大きく変わらない可能性が極めて高い)(7)実際に医事紛争に遭遇する率は、内科系よりも外科系の医師が高い(8)2000年代まで最もクレームが多いのは「手術」に関するものであったが、2010年代前半では初めて「管理」が最多となった(9)今後は医療・医学以外にも患者への管理・監督責任が問題視される率が高まる可能性がある(10)裁判にまで至る医事紛争はそれ以外の紛争よりも減少し難い傾向が認められる(11)医療裁判の審理期間は確実に短縮されている?医療機関の独力で解決を試みると逆に時間を要するので協会と協力する姿勢が重要である。
 概要を纏めただけでもこれだけのボリュームである。これからも55年の歴史に恥じないように、医療安全のパイオニアとして精進していきたい。

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