新年度にあたって/政策部会副理事長 渡邉賢治
開業医医療の復権を
国が進めている医療費抑制政策には、診療報酬による医療費抑制と医療提供体制改革による医療費抑制のこの二つの面がある。さらに医療費抑制策によって公的保険サービスをできる限り縮小させ、削減した部分に営利産業を取り込み、医療の産業化を狙っている。私達は、これら三つの面に対して運動を展開していかなければならない。
医療提供体制改革の中に病床機能報告制度とこれに基づく地域医療構想がある。これらは、川上の改革であり、川下の改革の中心は地域包括ケアシステム構築である。この川下の受け皿がしっかり構築できていなければ、医療提供体制改革は完結できない。したがって、そのためには地域の診療所を巻き込んでの医療提供体制の再編、改革を行う必要がある。この地域包括ケアシステムの担い手として国は総合診療専門医を考えており、総合診療専門医を「かかりつけ医」として「ゲートオープナー」の機能を担わせようとしている。そうなると、「ゲートオープナー」である総合診療専門医の偏在は許されず、適正配置が行われるはずである。『保健医療2035』でも「将来的に、仮に医師偏在が続く場合においては、保険医の配置・定数の設定や、現在の自由開業医制・自由標榜制の見直し」を行い、「総合的な診療を行うことができるかかりつけ医」を「すべての地域」で配置するとしている。また、「かかりつけ医」を受診した場合に患者負担に「差を設ける」という提案もなされている。
これまで日本の医療を支えてきた、国民皆保険制度、フリーアクセス、自由開業医制、出来高払いを、「総合診療専門医」は崩壊させていくことになる。また新専門医制度も専門医の取得、更新の厳格化で専門医の数を制限し、地域に適正配置していく可能性もある。国はこれら制度を明らかに医療費抑制の手段として考えている。
私たちは、社会的にも経済的にも国から縛られることのない開業医という立場から、今まで築き上げてきた国民皆保険制度を守り、さらに充実させ、「開業医医療の復権」を目指していく運動を進めていかなければならない。