新年度にあたって医療安全対策部会  PDF

新年度にあたって医療安全対策部会

医事紛争の2010年度状況と今後の協会の医療安全対策

副理事長 林 一資
副理事長 林 一資

 協会の医療安全対策部会は昨年発足50周年を迎えることができた。これもひとえに会員の皆様のご協力のおかげであることに感謝の意を表するとともに、今後とも諸活動について、ご理解ご尽力をお願いし、なお一層のサービスを心掛けていきたい。

 さて、2010年度医事紛争の主な特徴を挙げると、次のようになる。(1)事故報告件数は50件で、03年度(103件)をピークに7年連続で減少傾向が進んでいる。(2)事故報告件数の病診比率は病院:診療所=2:1で、病院の減少が大きい(数年前までは4:1程度)。(3)全事故報告中、94・2%が既に解決した(過去最高の解決率)。(4)依然として複数回の紛争報告をされる会員医療機関が存在する。

 これらのデータを見れば、医療現場の状況が少しずつでも改善されているかに思われる。我々は医療安全研修会等で、「医療崩壊」の大々的なマスコミ報道による国民の医療に対する意識の変化や、福島県立大野病院の産婦人科医の無罪判決等を例に出すことも多く、少なくとも90年代後半から顕著となっていた医療界への逆風は収まってきていると表現することもある。しかしながら医療人は、決して神でもなければ機械でもない。医療事故を完全に根絶することは不可能である。大切なことは、医療ミスを起こさないようにする心構えとその体制をいかに構築するかである。そのためには医療安全マニュアルの作成、ヒヤリ・ハットの活用など日々の工夫が大事であり、もし不幸にして事故が起こってしまったときは、事故の原因究明を早急に充分に行い、今後の教訓にしていくことが肝要である。現在の医療は医療安全以外にも様々な課題・問題を抱えている。従って、いかなる時も医療界に追い風が吹くことはないように思われる。

 医療安全対策部会は、新年度に当たり、新たな取り組みを考えている。トラブルに困っている会員の救済は当然ながら、我々の経験を京都府内に止まらず、いかに全国的に広め、医療安全の究極の目的である、医療機関・医師と国民・患者の信頼関係の構築を更に強化していく。そのための有効な方法を模索していくべきではないだろうか。政府の考える医療事故調査委員会、ADR(裁判外紛争解決)やAi(死亡時画像診断)なども重要な検討課題である。

 最後に、会員各位には、ぜひ、協会の医賠責保険に継続加入していただくとともに、気がかりな事案が発生したときには、遠慮なく協会の医療安全対策部会を活用していただきたい。

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