新専門医制度 地域別診療科別定数設定で委員長私案
厚労相も規制策検討打ち出す
厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会が「保険医定数制」や自由開業制見直しを論点提示(2964号既報)したのに続き、医師の「定数」に係る提案がなされた。厚労省の社会保障審議会・医療部会「専門医養成の在り方に関する専門委員会」の第2回会合(4月27日開催)での永井良三委員長(自治医科大学学長)の私案「新専門医制度に関する論点」である。
同委員会は3月、地域医療への影響を危惧した医療団体からの「新専門医制度」実施延期要求等、混乱し始めた事態を受けて厚労省が設置した。なお、私案は7項目に及ぶが、本文が示されたのは3項目のみ。
地域医療への混乱防ぐ目的で私案提示
私案は、「新専門医制度」による地域医療への混乱を防ぐためとして、都道府県設置の協議会の役割強化を打ち出す。協議会が都道府県ごとに先に定める「定員」と基幹研修施設作成の研修プログラム(一次プログラム)をもとに、「地域にあった育成プログラム」(二次プログラム)となるよう、管内施設や日本専門医機構と調整し、専攻医の身分や待遇についても監督・指導する役割を担うべきと述べる。すなわち、協議会の役割を高め、機構はシステム評価とアドバイス等が中心、各学会は「プログラムの考え方」を示し、基幹施設がプログラムを作成するとの新たな役割分担を整理した。その上で協議会が二次プログラムを調整し、必要な責任と権限は議論が必要とした。
定数制で医師偏在解消狙う
専攻医数の募集枠設定は、専攻医の都会偏在を避けるため、「需要と供給の関係を把握」し、「専門医の需要に応じて診療科ごとかつ都道府県ごとに専攻医の定員を設定する必要がある」とする。各領域の募集専攻医数は国の総数(希望者数または調整後の「希望者数」)の1・1〜1・2倍程度とし、都道府県ごとに患者数や面積などを反映して定める。ただし現時点では、都道府県に必要なデータ蓄積や協議会の体制が十分でなく、当面は従来どおり各学会が専門医養成プログラムに関し中心的役割を担い、都道府県ごとの定数は過去3年間の「採用実績」の1・1〜1・2倍を全国の定員枠として、都市部以外の道県に、より配慮するとした。
私案は、専攻医の都市集中を回避し、地域医療への影響を抑えるための立場からの定数設定である。一方の医療従事者需給検討会で俎上にのぼった「保険医定数」制も「偏在是正」を目的に、医療需要から必要医師数を導き出す立場で医療サイドから提起され、共通の現状認識と解決方向だといえる。
医療費抑制のための医師管理の危険性
しかし医療サイドからの提案が、国家レベルで推進される経済財政一体改革路線(医療費抑制と成長戦略)に利用され、医療費抑制のための国家による医師管理システムへ、結果として向かうことは断じて避けねばならないだろう。実際、塩崎恭久厚労大臣は5月11日の経済財政諮問会議で「医師に対する規制を含めた地域偏在・診療科偏在の是正策」を年内にとりまとめる意向を示した(次号詳報)。
厚労省での自由開業制や保険医定数制をめぐる議論は、今のところ「新専門医制度」と「地域医療構想」の二方向からなされている。その落としどころはいずれも「都道府県による管理」である。医療保障の立場で、現場医療者が自治体に対し意見を発信することが、いよいよ重要な事態になってきた。