文化企画 生命の輝きめくるめく色彩で表現 異国風描写が特徴の伊藤若冲に魅せられて
協会は12月12日に、京都嵯峨芸術大学教授の佐々木正子氏を講師に「伊藤若冲の魅力」と題した文化講座を開催。32人が参加した。2016年は若冲生誕300年ということもあり、佐々木氏は若冲の生涯を追いながら作品の特徴などを解説した。以下、参加記を掲載する。
「伊藤若冲の魅力」を聴いて
田代 博(右京)
私は小学校で版画を習って以来、年賀状は干支に関連する版画を出してきました。1992年、画集を見ていて1枚の絵に目がとまりました。伊藤若冲の群鶏図です。江戸時代にこんなにいろいろ鶏がいたのか、と同時にすごい絵だと感じました。それ以来、若冲のことは気にしていましたが、近年いろいろな展示会が開かれるようになりました。
今回、保険医協会で「伊藤若冲の魅力」と題する文化講座が開催されました。講師は、京都嵯峨芸術大学の佐々木正子先生。東京芸術大学で日本画を専攻され、卒後は描法解析を取り入れた日本芸術史を研究されています。夫君丞平氏は京都国立博物館館長で、やはり美術史研究家ということで共同の展示会ができそう、とのことでした。
日本画の特徴は、削ぎ落として余白を残すことですが、若冲の絵は中国風で、なんでも書き込んでいくものです。狩野派をもとに、長崎を通じて西洋の技法、明の技法を習得し、万福寺の僧鶴亭、相国寺の大典和尚の教えを受けました。仏教寺院は中国に通じる国際的文化センターであり、相国寺では水墨画、万福寺では漢詩・書を修業したそうです。
若冲は禅の基本を「山川草木、これ総て霊あり」として全ての生き物の生の輝きを描こうとしました。奇想派と言われ、墨線による輪郭を入れない描法の他、韓国の紙織画風の升目描き、点描、光によって変化する影を描き、絹に補色を利用して裏彩色するなどの工夫をこらしています。作品の多くは寺院に寄進され、明治の廃仏毀釈の際は相国寺を救うという役割を果たしました。
一時期忘れられていましたが、約50年前、アメリカ人ジョー・プライス氏が収集を始め、若冲作品の復活に尽くした結果、この素晴らしい作品を私たちも見ることができるようになったのです。2016年は若冲生誕300年で、各地で展示会が開催されます。
是非とも作品を楽しんで下さい。