政府税調、「四段階制」再検討へ/財務省「目的達成されていない」  PDF

政府税調、「四段階制」再検討へ/財務省「目的達成されていない」

 政府税制調査会は、診療報酬の所得計算特例措置(いわゆる四段階制)について、存否を含めて制度の在り方を再検討する方針だ。会計検査院が四段階制の適用状況検査を行い「多額の自由診療収入があっても、診療報酬額が5000万円以下であることで特例を適用している状況がある」などとする検査結果をまとめたことを受け、再検討の必要性があると判断した。11月8日の政府税調で議題にする予定だったが、具体的な議論は11月15日の会合に先延ばしになった。

 四段階制は、保険診療にかかる所得税の必要経費を計算する際に、実際にかかった経費ではなく、4段階の概算経費率を使える仕組み。保険診療で支払いを受ける金額が年間5000万円以下の場合、診療報酬金額を4段階に区分し、それぞれの区分に応じた概算経費率(72%、70%、62%、57%の4段階)を診療報酬金額に乗じた額(概算経費)を必要経費とできる。小規模医療機関の事務負担を軽減することで経営を安定させ、医療提供体制を確保することを目的としている。1954年に創設され、1988年の改正で、現在の内容になった。減収見込額は2011年度ベースで245億円。

 会計検査院は「特例が長期にわたり存続する一方で、厚生労働省が05年度以降、要望書を財務省に提出しておらず、近年の税制調査会などの見直し議論の中で十分な検討が行われにくい状況にあった」として、特例の適用状況を検査した。

 検査の結果▽多額の自由診療収入があるのに特例を適用している状況がある▽特例の概算経費率と実際の経費率に差があり、多額の措置法差額が生じている▽特例適用者のほとんどが、実際の経費を計算した上で概算経費と比較して有利な方を選択している―などとし、財務省と厚労省で特例が有効・公平に機能しているかを検証し、目的に沿った適切な制度にするための措置を講ずるよう求めた。10月28日付で安住淳財務相に意見表示している。

 財務省はこうした会計検査院の指摘を整理し「自由診療収入を含めた医業収入が1億円を超える特例適用者もいる」「多額の措置法差額が生じている状況は税負担の公平性の見地から適切ではない」「実際経費を計算した上で概算経費と比較して有利な方を選択して申告しているため、申告書の作成事務上は小規模医療機関の事務処理の負担軽減という特例の目的は達成されていない」として、存否を含めて制度を再検討する方針を示した資料を11月8日の政府税調に提出した。ただ、審議時間がなく11月15日に議論することになった。(11/9MEDIFAXより)

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