政府は今こそ社会保障の充実を
理事長 関 浩
会員、ご家族ならびに職員の皆様、おだやかな平成21年の新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。今年は京都府保険医協会設立60周年となる記念の年であり、理事者、職員さらに思いを新たにしております。また政治の世界では、政権交代が現実味をもって語られる情勢にあること自体が、小泉構造改革の嵐が吹き荒れていた時には考えられもしなかったことであり、ひとつの時代が転機を迎えようとしている感を抱いております。
現在、国の一般会計が86・1兆円、国民医療費は33兆円です。2025年度には医療費が65兆円になる! これで「医療費を抑制しなければ国家財政が破綻する」と経団連は主張しました。しかし、国民医療費というのは医療に使われた1年間の総額であり、医療費33兆円のうち国庫負担は8・2兆円にしか過ぎず、これは一般会計の9%程度です。これが国家予算を破綻させるというのでしょうか。医療費の国庫負担額は6年間で1・4兆円ほど増えてはいますが、これに対し、小泉政権の間に国債発行額は246兆円も増えているのです。財政を圧迫しているのは医療費でしょうか? また、高齢者の医療費はイメージと異なり、ほとんど横ばいで推移しています。
後期高齢者医療制度は見直しではなく「廃止」であるべきです。しかし「廃止」の後に、どのような方式が選択されるかをはっきりさせる必要があります。(1)旧来の共同事業方式(2)現在の独立方式(3)連合案の突き抜け方式(4)日医の公費拡充案(5)坂口私案の財政調整方式(6)民主党案による保険一元化(7)舛添私案、等が検討対象となりましょうが、今度こそ当事者である高齢者の意見が反映されなければなりません。
また本年は第4期介護保険事業計画の策定に合わせて、介護保険料改定が行われ、そこでは、維持期リハ=短期通所リハを医療機関が介護保険で給付する仕組みが導入されようとしています。これにより、保険医療機関がまたもや介護保険事業者として指定され(みなし指定)、「医療から介護へ」「医療か介護か」の判断と実施が、保険医療機関に押し付けられることになるのです。さらに政府は財政難を理由に、受け皿の整備もないままに療養病床を削減し、施設から在宅へと方向転換しようとしているのです。
これまでの3年ごとの介護報酬改定は2回続けてマイナスでした。その結果、介護職員にしわよせを押し付け、介護職の希望者が減り、離職率も高まるという負の連鎖がみられます。
政府はやっと、今年度改定で3%の介護報酬増額を決めましたが、これで現場が救われるかは疑問です。日本は遠くない将来、介護必要大国となります。今こそ、国民一人ひとりの介護の不安と負担を軽くし、介護で夢を失うのでなく介護が夢を支える、創造力と活力ある社会を目指さなければならないと考えます。
今年も会員の皆様の協会活動への積極的なご参加をお願いして新年の御挨拶と致します。
【京都保険医新聞第2672・2673号_2009年1月5・12日_1面】