政府が医療保険改革骨子 国保の都道府県移管や負担増打ち出す
政府の社会保障制度改革推進本部(本部長=安倍晋三首相)は1月13日、医療保険制度改革骨子(下表に要旨)を決定した。通常国会に関連法案を提出する。
骨子は、財政運営の厳しい国民健康保険を都道府県へ移管し、高齢者と現役世代の双方に負担増を求めることなどを柱としている。
国保の安定化については、約1700億円の支援を15年度から実施。後期高齢者支援金の総報酬割の比率を段階的に高めて17年度に全面導入すると、協会けんぽに投入していた国費2400億円が浮くため、17年度時点で国保に約1700億円、健康保険組合の支援に約700億円を回す。国保への国費投入は総額3400億円程度増えることになり、財政基盤強化の環境が整った上で、18年度に国保の財政運営を市町村から都道府県に移行させる。
また、入院時食事療養費の段階的引き上げ、紹介状なし大病院受診時の定額負担や後期高齢者保険料軽減特例の段階的縮小など、特に負担能力が低い層の受療行動に大きな影響を及ぼしかねない負担増のほか、患者の安全性確保にも懸念のある患者申出療養の創設が盛り込まれた。
さらに、医療費適正化計画の中で医療費水準などに関する「目標」を設定することも求めており、これに対しては都道府県から「結果責任が取れない」「目標値が一人歩きする懸念」(9日の社会保障審議会医療保険部会)などと反対姿勢が示されている。
本紙でも今後、これらを詳しくみていきたい。
医療保険制度改革骨子の主な内容
●国保の財政支援を15年度から約1700億円拡充、更に財政基盤を強化
●国保の財政運営を市町村から18年度に都道府県に移管
●後期高齢者支援金の総報酬割の割合を段階的に高め、17年度に全面導入
●協会けんぽの国庫補助率を当分の間16.4%に
●医療費適正化計画で、都道府県は地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を設定し、国はこれに必要な指標等を定める。現行指標の必要な見直しを行うとともに、後発医薬品の使用割合等を追加
●都道府県は地域医療構想の策定後、構想と整合性が図られるよう医療費適正化計画を見直し、第3期計画(18〜23年度)を前倒して実施
●国が策定するガイドラインに沿って、保険者が保健事業でヘルスケアポイント付与や保険料への支援などができることを明確化
●入院時食事療養費は1食分の自己負担を16年度から360円、18年度から460円へ引き上げ(低所得者、難病患者、小児慢性特定疾病患者は据え置き)
●紹介状なしでの特定機能病院、500床以上病院の受診は、16年度から選定療養として初、再診時に原則定額負担
●所得水準の高い国保組合の国庫補助を16年度から段階的に見直し
●後期高齢者の保険料軽減特例を段階的に縮小
●健康保険の保険料、16年度から標準報酬月額の上限額等を引き上げ
●国保の保険料(税)の賦課限度額を段階的に引き上げ、15年度は4万円引き上げ
●患者申出療養(仮称)を16年度から実施