改訂版 医療安全対策の常識と工夫(22)
こんな医者は許せない!
患者さん達に「どんなお医者さんに診て貰いたいですか?」と尋ねたら、ほとんどの方は「腕の良いお医者さん」と先ずは答えられます。なるほど当然の答えでしょう。ところが、医事紛争に遭遇した患者さんの中には、主に医師の人格や態度といった、医療以外について非難する場面が見られます。どうやら「腕の良い」と同じ程度に「親切に話を聞いてくれる、分かり易く話してくれる」といった、医師のいわば人間性をも重要視しているようです。これも患者の権利意識の高揚を表す一例でしょう。
もちろん、医療機関側も「この時代にそんなことは百も承知!」と仰ることでしょう。しかしながら「言うは易し、行うは難し」という声も一方で聞こえてきそうです。事実、現場におられる方なら、いかに医療従事者が忙殺されているか、その実状を知らない方はいないでしょう。
患者さん達もそうしたことが十分わかっていても、医師や医療従事者が忙しさの余り、患者さんへの説明や受け答え、態度が(やや)お座なりになると、その瞬間に患者さんは「んっ?」と不信感を抱きます。それに加えて治療の結果が予想外であった場合は、医師・医療機関への全面不信、極端な場合には全否定となるのです。
京都府保険医協会に報告されるトラブルの多くは、確かに医療行為の結果が悪かったものです。無責を主張される多くの医療機関も「医療上のミスはないのだが、結果が悪かったから文句を言われたんだろう。彼らは医療を『絶対』だと誤解している」と言われます。協会としては事実関係の調査を進めるのですが、紛争の蔭に潜んでいるであろう患者さん側と医療機関側の人間関係にまでは、なかなか踏み込めません。「人間関係」についても従業員の教育を含め、常に念頭に入れておいて欲しいものです。
次回は、インフォームド・コンセントの実践についてお話します。