改訂版 医療安全対策の常識と工夫(13)

改訂版 医療安全対策の常識と工夫(13)

危険な態度!「取りあえず謝っておこう…」本当の誠意とは?

 言うまでもなく医師は、「患者さんに少しでも良くなって貰う」ことを願いながら診療しています。それ故、患者さん本人はもちろんのこと、医師にとっても自分の行った医療行為が、予想外に悪い結果をもたらした場合、そのショックは計り知れません。また、それと同時に医事紛争の気配が漂ってきます。

 その時、患者さんやその家族は驚き、怒り、不信感を募らせ、医療機関側に詰め寄ることもあるでしょう。そのような時、医師も平常心が保たれているとは限りません。それでなくとも、予想外の結果となったのですから、医師も結果の悪さのみを判断して、「このようなことになるとは思いませんでした。私の力不足です。誠に申し訳ありません」と、謝罪してしまうケースが案外多いのです。

 そこで注意していただきたいのは、何があっても謝るな、ということではなく、国家資格を持つ医師が謝罪するには、それ相当の責任が発生する、ということです。患者さんは医師が謝罪をするということは、それが道義的に限ったものでさえ重大視するとともに、賠償責任をも認めたものと解釈しがちです。

 しかしながら、京都府保険医協会が調査をした結果、医療過誤は認められない、ということも稀ではありません。この時点になってから患者さんに、「実は賠償責任はありませんでした」と言ったところで、「いったん、謝ったくせに、あれは嘘だったのか!」と詰め寄られかねません。本来ならば理解できる説明も、受け入れて貰えない事態に陥ることもあるでしょう。

 その場の事態を収拾したいがためだけの「謝罪」は、混乱に拍車を掛けることになりかねません。患者側にやむを得ず謝罪しなければならない場合には、最終的な判断は調査を終えてから返答することを確実に伝えるとともに、「道義的」な謝罪をする、ということを強調して下さい。

 次回は、医師が謝罪する際の条件についてお話しします。

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